地震に強い家を建てたい!制振装置と免震装置それぞれのメリット・デメリット
2024年04月16日
地震に強い家の基本は、変形しない構造を造ること
なぜか間違っている考え方の一つに、木造は柔軟さで地震の揺れを吸収するとか、木の接合部での変形で揺れを逃がすというのは現代の家ではありえないことです。
家づくりの基本は耐震です。
- とにかく固く変形しないようにつくる
- 基礎に強固に固定することが大前提です
強い家を保つための2つの装置【制振装置・免震装置】
タマゴグミでは制振装置を推奨しています。
能登半島沖地震が発生して繰り返し訪れる地震の怖さをひしひしと感じています。
タマゴグミの家は耐震等級3 大きな地震に対して大丈夫なのですが、それ以上を考えなくてはいけないと思いました。
現在タマゴグミでは制震装置を推奨しています。
今までも数棟制振装置を設置しています。
使用しているのは、速度依存型の制震オイルダンパーでメーカーはevoltz(エボルツ)のオイルダンパーです。

evoltzのオイルダンパー ドイツビルシュタイン社製です。
この製品については、先日メーカ担当と対談したビデオとともに次回アップします。
なお、今まで建てたお客様にも装置をつけることは可能です。ただし、1階の一部壁約5カ所から10ヵ所を貼替をする必要があります。
この工事は、タマゴグミで建てさせて頂いたお客様に対しては原価にて提供します、遠慮なくお申し出ください。
言葉の勉強 耐震 制震 免震
地震に強い家をつくるために覚えておいてほしい言葉は3つです。
- 耐震
- 制震
- 免震
の三つです
耐 震
漢字から読み取れるように 地震に耐えることです。
基本は、形を変形させないように固くすること。木造では耐震だけをとると床と壁天井を合板のパネルでつくる2×4工法などは理想的な構造と言えます。

シアトル視察の時に訪問した2×4住宅の現場です。 おおらかに作っています。
現在は、日本で主流の在来工法でもほとんどが2×4工法の考えを取り入れて構造用面材を使用するようになってきています。

在来工法も面材で耐力壁をつくることが多くなりました。
目的は、強い揺れに対しても建物を変形させず 柱や梁が折れて建物がつぶれることを防ぐことです。
制 震
漢字から読み取れるように、地震の力を制御してしまうことです。
制御を辞書で調べると 「自由勝手にふるまわせず、押さえつけて自分の思うように支配すること。」とあります。まさにそれですね。
住宅では、地震の振動の力を吸収する装置で揺れを制御しています。
基本的に地面と建物が強固にくっついている時は制振と言っていいと思います。
スカイツリーは質量付加機構という原理を使っており、地震の揺れのタイミングにずれて重いおもりが動くことで揺れを相殺させる装置がついています。
台湾の台北101では大きな振り子がぶら下げててあり、それで揺れを制御しています。

台北101の制振装置。大きな振り子です。
また、高層ビルのゴムダンパーも制振装置の一種です。住宅の制振装置とは全く違う考え方ですが、大きな構造体には有効なものです。
目的は超高層ビルと住宅とは少し違いますので、住宅に絞っていいます。
住宅の精神の目的は、耐震性能を保ち続けることです。
たまに、制振装置をつけたら地震の時に揺れが感じられなかった、という動画や文書が出ていますが、揺れを感じさせなくすることが目的ではありません。
免 震
地震の揺れを免除してしまうことが目的です。
極端な例を出します。地上で凄い揺れの地震が起こっているのに飛行機にのっていれば全く感じないと同じです。
なかなか説明しづらいのですが 地震の揺れを逃がしてしまうのが免震という理解で良いかと思います。
住宅の場合、地盤と基礎の間の縁が切れていて、その部分が自由に動くようになっているという感じです。
目的は、地震の揺れを家自体に伝えないこと。です。
制振装置と免震装置のメリット・デメリット
チョット順序を逆にして免震装置から考えてみます。
免震装置
最高の装置だと思います。地震が来てもほとんど揺れないのですからこれ以上よい物はないでしょう。
例えば…
- 大きな地震が来ても家がほぼ揺れない
- 柱や梁が変形しないので家の耐震性能はつくられ時のまま
昔の免震装置は風が吹いたら家が移動したなんて言う笑い話ようなことがあったようですが、現在はほぼありません。
ただちょっと懸念することがありますので書きます。
- 価格が高い
数年前に一度メーカーさんに見積もりしたことがあります。総額700万円 まあ、それくらいはかかるのではないかと思います。
- 大地震の振幅に耐えらえるか。
地震には揺れ幅があります。
マグニチュード6程度で震源地から100キロ離れた場所揺れ幅が数十センチから1メートル程度です。
マグニチュード9の大地震になると震源地から100キロ離れたところでは振幅は1メートルを優に超え数メートルになるとのことです。
揺れをゼロにしようということでしたら、それだけ振幅を吸収する必要があるということで施工不可能となります。
ただし、住宅の免震装置ですが私の調べた限りですが免震装置は表面最大加速度を2分の1以下にするように設計されているようです。商品によっては3分の1や4分の1にしているようです。単純にはいえないですが揺れを半分にする装置と考えた方が良いです。
住宅の免震装置は、地盤と本体を切り離した制振装置と考えてもよさそうです。
- 軽い木造住宅には不利
鉄筋コンクリート造などに比べて重量がない木造の場合は、小さな力で動くような装置にしなくてはいけません。そうなると、風の影響を受けやすくなります。
初期のころ風で家が動いてしまうという問題がありましたが、現在はセンサーをつけて地震時以外は固定しているという装置も出てきています。
制振装置
制振装置には主にオイルダンパータイプ、ゴムダンパータイプ、テープのタイプ、鋼製ダンパータイプがあります。
利点は、
- 比較的安価であること。弊社が採用しているオイルダンパータイプ(速度依存型制振装置)を例に挙げますと、2階建て住宅で50~100万円程度です。
- 施工性が容易であること。それで効果は十分見込めることです。
欠点・というと何となく違うので、特徴ということで説明すると
- 地震が発生した場合揺れはしっかりと感じます
制振装置の目的は、建物の変形をより少なくして耐震性能を保つことです。ですので、装置を付けたからと言って揺れを感じなくなったり、家具が転倒しなくなったりするわけではありません。(多少は揺れは小さくなりますが・・)
- 半永久的に効果があるわけではありません。
大きな地震に何度も何度も耐え抜く性能を保ち続ける能力はありません。
通常の耐震だったら震度7程度の大きな揺れに3回程度で破壊が始まるところが、制振装置をつけることで、その回数が7回とかに増えるという感じです。
また、変異依存型制振装置の場合は耐えらえる回数が減る恐れがあります。
(速度依存型・変異依存型につては次回説明します)
- 耐震性能が低い建物には向かない
耐震性能が低いと、効果はあるものの費用対効果は凄く少なくなります。
耐震等級2に制振装置をつけるのであれば、耐震等級3プラスαの建物を作った方がはるかに費用も抑えられ、効果も高いと思われます。
今回はちょっとマニアックになってしまいました。
次回は・・・やっぱりマニアックになるかも。
耐震装置のメーカーとのあんなことやこんなことまで突っ込んだインタビューをしました。そのブログは下です。
制震装置evoltzのセールスエンジニアと本音対談をしました
この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。