COLUMN

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居心地の良さの設計

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「うちの家 新耐震基準だから大丈夫ですよね」とよく聞かれますが

うちの家 リフォームした方がいいですか?建て直した方がいいですか?

この質問は、年に数度うけます。

電話だけでのご質問の方もいらっしゃいます。

その場合、私は「見てみないと何とも言えません。」とお答えします。

そうすると殆どのかたが

「うちは新耐震以降の家だから大丈夫だとは思うのですがどうですか?」と答えられます。

それでも、「やっぱり見てみないと解りません。」とお答えすると半数以上の方は「それならいいです。」と電話を切られます。

 

新耐震基準の家なら大丈夫? とは言えない事実

まず新耐震基準というものを簡単に説明します。

新耐震基準とは1981年6月から施行された耐震性能の基準で「震度5強程度の中規模地震では軽微な損傷程度の被害、震度6強から7程度の大規模地震でも倒壊しない基準」

です。ちなみに現在も建築基準法はこの基準となっています。

ということは、新耐震基準で造られている家は大丈夫じゃないの?と思いますよね。

それが、そうは言えないのです。

 

そうか、タマゴグミは耐震等級3じゃないとダメと言いたいんだな。

 

それもそうなんですが、20年以上前の住宅を耐震等級3に持っていくのは至難の業です。だからそこまでは言いません。

新耐震基準の家だから大丈夫とは言えない理由があるからです。

 

理由1

新耐震基準以降の家なのに、その基準を満たしていない・・・じゃなくて満たしているんだけど、それ間違っていますよ、というか、そんな設計建築士がやっていたら首絞められますよ。という物件がある事実。

 

理由2

愚かな設計をしているのに、施工もそれ引けを取らずムチャクチャという物件もありますよ。

 

 

この2点です。

 

とはいっても具体的にはわかりませんよね。

そこで今回実際の物件を見てもらいながらご理解いただきます。

 

※もう一つ理由があるのですがそれを今回書くと混乱しますので2点に絞ります。

 

見て頂く物件は タマゴグミが買い取った物件です

ちょっと変わった建物で、昭和40年代の建てられた家を平成に入って補強して2階建てにした物件です。

 

2年前に一度空き家を買ってリフォームしてみたいという衝動に駆られて、ついつい買ってしまいました。

購入前に、図面チェックと現地確認で「えっ、これが一級建築士が関わった物件?(多分名義貸しのようなもの?)けど改良すれば何とかなりそうだな。腐りはなさそうだし、平成初期にリフォームしているから外回りもまだまだ大丈夫。」と判断ていました。

 

購入して、いざ解体調査してみたら・・・・

 

えっ、これが平成初期に改装した物件?図面通りじゃないし施工がひどすぎ。

 

当初はサッとリフォームして売却しようと思っていたのですが、気づいたらすべてばらしてやり直しをしました。

理由1 新耐震基準の設計がされていないことがある

もう出してしまいますね。これがタマゴグミが購入した物件の1階図面です。

 

これを見たとき「まじか。これ。」と思いました。常識的には100%やらない設計です。

図を見てもらえばわかるように、耐力壁(地震に耐える壁)が縦の通り(赤の部分)しか入っていません。この状態だと、丸の方向の力には耐えますが、バツの方向からの力は全く耐えられないということです。また、バランスも最悪で、左の壁が強すぎて、丸の方向からの力が入ると、家がひじってしまいます。

この状態を解っていて買った理由は、もともと1階はプラン変更をしようと思っていたのでその時耐震補強を内側からしようと思っていました。

 

ここでふしぎ発見

何でこんなでたらめ設計でも確認申請が通るの?

そう思いますよね。この図面、役所がしっかり見た場合はまず通りません。けど、この建物4号建築にあたり、「国家資格の建築士が設計していたら構造関連の書類提出は不要でその部分は審査しない。」のです。

 

こんなにひどくはなくとも、まともに設計されていない物件があるという事実があるから、案に新耐震基準で造られた家は大丈夫とは言い切れないのです。

 

バブルだったから? 平成初期、こんな施工の物件もあります。

タマゴグミが買った物件、解体調査の写真をお見せしましょう。

 

1階の外に面した壁を部屋内から解体した写真です。

「あれっ?断熱がない。この外板金1枚なんだぞ。平成のリフォーム物件だぞ!!」

これは、単なる忘れでなくてどんな素人でも絶対断熱入れなくちゃダメだろうと気づくところです。この段階で徹底調査をすべきと判断しました。そして

壊す気がなかった2階の内壁をめくってみると、案の定カビだらけ。ただ、断熱をタッカーで止めていたのでまあ良心はあったのだろうと予想しました。

断熱材を捨てるためにめくっていたら、次の問題が

筋交いが図面通りに入っていない。

図面では青いスパンごとに入っているはずが、赤いスパンで入っている。

壁量では両社とも同じなのですが、実際は全く違います。現状のスパンでは地震時に筋交いに座屈がおこりやすくなり予定していた耐力を出してくれません。

 

冷や汗が出てきました。2階をまともに改装する予算なんて全く見ていません。私も

新耐震基準+一級建築士の設計+それに平成の改装物件=安心 という神話を信じてしまっていました。

 

さらにこのあと決定的な問題が

 

防水紙の重なりがほぼゼロ。普通は重なりが矢印の位置になくてはいけません。

わざわざ重なりの位置が紙に印刷されています。どんな人が施工しても間違えないように。

 

これは、職人(とは言えないな)の意識の低さもですが、請負をしていた建築屋の意識の低さがもたらした結果でしょう。

 

ここまで来て、決めました。もうすべてばらしてやり直そう。予算はどうでもいいや、うちのモデルとして使用しよう。

 

そしてタマゴグミは

まずは、許容応力度計算をして、

梁の寸法が足りないので、大工さんと一緒に補強梁をそこら辺中に追加しました。

外部は足場を組んで、耐力面材を全面に貼り気密テープを貼りました。

 

断熱は壁天井ともすべてやり直し。

ついでにサッシは樹脂サッシに変更。

もうヤケクソです。

そして今は

チョット上のほうだけですが、木貼りの外壁ににして仕上がりつつあります。

 

今日の結論

 

新耐震基準の家 一級建築士の設計 築浅の物件 だからって安心ではありません。

家は見てみないと解りません。