樹脂サッシが主流になった理由!タマゴグミで採用する理由と各社比較
2024年06月25日
タマゴグミでは近年は樹脂サッシが標準となってきました。フルオープンサッシ等特殊なサッシをのぞいて樹脂サッシを活用しています。
他社さんでも、樹脂サッシが主流になってきています。
で、不思議に思いませんか?
何であんなプラスチックぽくって、ごつく不格好な(と言ったらメーカーさんに失礼か)サッシを採用しているの?と思いませんか。
多分勉強熱心な方は思わないかもしれませんが、実は30年弱前の私もそう思っていました。その時、一級建築士の資格を持っていたにも関わらずです。
な~んだ、プラスチックのサッシかよ
このブログにたまに出てくるシアトルの話です。
一番最初に行ったのは30年弱前、日本ではアルミサッシが主流で樹脂サッシなど見たことがない時代でした。
シアトルの大工さんに連れられて木造4階建てのマンションを見に行ったときです。
その現場のサッシを見て私が思ったことは
「な~んんだ。アメリカはプラスチックのサッシか、なんかチャッチイな。日本なんてアルミだぜ!加工技術は日本が上だからな。」
なんてことを一級建築士の私が思ってしまったのです。
今の私があの時の私の後ろに建っていたとしたら、思いっきり頭を殴ってやりたいほど恥ずかしいことです。
なぜ樹脂サッシが主流になりつつあるのか?
理由1:熱の伝わりやすさの差
アルミは、樹脂の1000倍熱を通しやすいのです。
水道の蛇口で例えると、蛇口を全開にすると1分間に20Lの水が出ます。
蛇口全開をアルミと仮定すると、樹脂は1秒間に1滴程度のポタポタと落ちる水量(14cc程度/分)よりちょっと多めの水量が出ているのと同じです。
サッシを上記のたとえで一概に表せませんがイメージとしてはそんな感じです。
なぜ樹脂とアルミの熱の伝わりやすさが違うのでしょうか?
結晶構造と密度の違いが主な原因です。
アルミは凄くきちっとした結晶構造をしています。真面目な中学校の全体朝礼の生徒の様に50㎝ピッチできちっと並んでいるようなものです。
かたや樹脂はまるで糸くずのような結晶構造でさらにはスカスカです。まるで、小学生が広い運動場で10組程度がウロチョロしているようなものです。
上記の状態で、伝言ゲームをしたときどちらが早くしかも広く伝達するでしょうか? それと同じです。
熱が伝わりにくいことで2つの利点があります。
1,エネルギーコストが抑えられる。
これは何となく解りますよね。
2,結露がおこりにくくなる。
アルミサッシの場合、冬に枠が滝のような結露をして悩みの原因だったのですが、樹脂にすることでほぼ起こらなくなります。これは大きな効果です。
理由2:価格がこなれてきた
これも一つの大きな要因です。
省エネ住宅が主流になってきて、多くの工務店が樹脂サッシを使う用になってきました。そのおかげで樹脂サッシが特殊から普通になってきました。その結果価格も特殊価格から通常価格まで落ちてきました。
実は15年以上前に完成したタマゴグミ1棟目の家(自宅ですが)には樹脂サッシを使用しました。日本住環境の教えで高くてもいいから一度使ってみてという理由です。
その頃、大々的に国内で樹脂サッシを作っていたのはシャノンというメーカーとその会社がOEMしていた三協アルミ位のものでした。
アルミサッシの倍以上の価格、いくら何でも高すぎだろと思いながら導入した覚えがあります。
理由3:木製サッシとの比較
本当は木製サッシが使いたいのです。断熱性能もよくデザインもよい。けど木製サッシはやっぱり価格が高いのです。
なぜ高いかというと加工の問題です。
先ほど熱の伝わりやすさについて書きましたが、その大前提は窓を閉めたら隙間が無いことです。そのためにはきちっとした寸法で作成しなければいけない。
木製の場合、一本一本削ったり切ったりしてそれを実現しなければいけないのです。それに木製の場合は、凄く乾燥した材料を使わないとひねったりしてしまいます。
その点、アルミや樹脂は工業製品ですので加工も容易で狂いも少ない材料です。
私の考える限り、以上のような理由で樹脂サッシが主流になってきたと考えます。
樹脂サッシの欠点
格好悪い
あの無駄にごつい枠。いつも「消してしまいたい」と思っています。
メーカーさんは日々そのことにチャレンジしているのでしょうが、まだまだです。
その理由は樹脂の強度です。
アルミでしたら少しの材料で強度が出ますので、薄く細くできます。中には内部からは一切枠が見えないという製品もあります。
樹脂は強度を出すために相当ごつくしないといけません。そのために重量も増えて開け閉めがアルミサッシよりも重くなっています。
紫外線に弱い(と言われている)
紫外線に当たり続けると退色します。初期のころの樹脂サッシはひび割れも入ったようです。
今の樹脂サッシはどうかというと、心配することはないかと思います。なぜそう言えるかというと、自宅で15年以上使ってみて確かに表面の退色は少し見られるものの気にするものでもなく、機能性は何ら問題ないからです。
準防火地域ではちょっと困る
準防火地域で樹脂サッシを使用するためには、メーカーと種類が限られてきます。
そして準防火用のサッシの価格は驚くほど高い。
これは本当に残念です。今後のメーカーさんに期待をしています。
メーカー別 サッシの断面を見てみよう
タマゴグミが使っている限りのサッシとなりますが、断面を見るとメーカーの考えが見えてきますので面白いと思って載せました
リクシルEW
タマゴグミがよく使っているメーカーです。
残念なことに防火用はありません。
樹脂サッシとしては後発組です。多分YKKをかなり意識して作っていると思います。
この断面からリクシルの考えがちょっとわかります。それはデザインを重視しているということです。
枠を出来る限り薄くしてガラス面を広くしています。なおかつ角をシャープにして線をきちっと見せるようにしています。
追伸:なぜリクシルをよく使っているかというと、この商品を扱っている「中央フロント工業」という会社が大変フットワークが軽く、サッシの問題があったらすぐに走ってくれるからです。
YKK APW330
安定のYKKの樹脂サッシです。樹脂サッシを日本に広げた立役者でもあると私は思っています。
樹脂サッシを安価にして「みんな、樹脂を使おうよ。」という心意気を感じて私は好きですね。また、少ない種類ながらも準防火地域対応のサッシを持っていることは好感が持てます。
デザインはちょっといまいちですが・・・
エクセルシャノン トリプルシャノンⅡX
断熱性能をまず確保するという樹脂サッシの原点を貫いている会社です。
価格は高めですので強くはお勧めできませんが、余裕があれば一考してもらいたいメーカーです。
リクシル・YKKの写真と比べてみてほしいのですが、樹脂で仕切られている数が多いのに気づきませんか?
この数が多ければ多いほど性能はよくなります。理由は熱の対流が小さく多くなることで熱の伝わりが遅くなるからです。
参考までに
アルミ樹脂複合サッシ リクシルSAMOSⅡH
タマゴグミでは、ご希望であれば今でも採用するサッシです。
枠が極端に細く内部からは枠がほとんど見えません。
さすがデザイナーホイホイのリクシル。スマートなサッシです。
それとアルミ枠を少なくすることで紙面上の性能はYKK330と同じ時期もありました。(計算方法が変わり、今は違います)
ただよーく見てください。アルミ樹脂複合と言ってもほとんどがアルミでできています。樹脂は内部枠の結露防止のために使用していたと考えても良いでしょう。
このサッシを使用するときの注意点は壁体内結露です。
写真のこの部分で結露をするので対策として写真のような結露水が壁の中に入らないような防止対策が必要となります。
まとめ
色々書きましたが、
エクセルシャノンを使うことが正解で、リクシルSAMOSⅡが不正解という訳では決していありません。
要はあなたが窓に何を望むかで選択すればよいのです。
数年すれば性能は必ず上がります。いま最高のものが3年後には標準の性能になっているかもしれません。それが証拠に、自宅でつけたバカ高い樹脂サッシの性能は、現在のEWや330よりもはるかに低いです。
性能は高いに越したことはありません。しかし最終決断は全体のバランスを考えて行うべきと私は考えています。
この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。