COLUMN

design

居心地の良さの設計

一覧に戻る

性能の先へ。家づくりで最も重要な「あなたの文化」とは?

文化がなければ、引き継がれる家なんてできない!

家の性能は当たり前になったこの頃、より高い断熱数値を追いかけるために窓をなくすという奇妙な家もチラホラと。

そんな時こそ、いま家づくりの本質を話をしたいと思い書きます。

今日は最近私がお会いした人、行った場所から改めて考えたことを書きます。

一見 家づくりとは関係ないと思われるかもしれませんが、家づくりを真剣に考えだした方にはどこか残るものがあるはずです。 ちょっとだけお付き合いください。

椅子

事務所においてある椅子。手前がJ39シェーカーチェア(ボーエ・モーエンセンさん) 奥が IW230Bウインザーチェア(五十嵐 久枝さん)

ある家具作家との会話で

 

先日、私の知り合いの家具屋さんの記念パーティーに伺いました。

そこで、デザイナーの佐渡川清氏とお話しする機会がありました。

佐渡川さんは、業界では有名なインテリア・家具デザイナーで80歳半ば 現役のデザイナーさんです。

こんな椅子のデザインとかをされています。

カンディハウスWING LUX LD (佐渡川清さん)写真はカンディハウスさんより借りました。

 

私からこんな質問をしました。

 

Q:椅子のデザインをするとき、空間を限定してデザインするのですか?

A:レストランなど使用される場所が特定されているときはそうだけど、基本はどんな空間にも合うようにと思ってデザインしています。

 

これは、私の想像と違いました。てっきり仮想の空間を決めてそれに合うようにと思っていました。というのも、空間に合う椅子選びのヒントが欲しくてこんな質問をしてみたのです。

 

Q:デザインするとき一番に考えるのは何ですか?

A:座り心地だよ。

 

うかつでした。そりゃそうだと思います。私も家の設計は、まず居心地から考えますので。

そして次の質問をしました。

 

Q:座り心地の次に何を重視してデザインしますか?

A:それは文化です。

Q:文化?えっ? 佐渡川さんの言う文化って何ですか?

A:文化は自分自身かな。

 

御年84歳のデザイナーさんからのこの回答は、日々迷い悩みながらデザインしている私にとって衝撃でした。

あなたも私もみんな文化を持っています。

文化を調べてみました。

文化とは

最も広く捉えると、人間が社会の構成員として獲得する、多くの振る舞い、生活様式の全体を指します。人類が自らの手で築き上げてきた、有形・無形の成果の総体とも言えます。

具体的には、以下のようなものが含まれます。

  • 生活様式全般: 衣食住、慣習、風俗
  • 精神的な活動とその成果: 学問、芸術(文学、音楽、美術など)、宗教、道徳、価値観、思考方法
  • 制度: 法律、政治
  • 技術: 機械、道具など(物質的文化)

これらは、それぞれの民族、地域、社会に固有のものがあり、学習によって世代を超えて伝えられ、また、交流によって発展していきます

文脈によっては、特に学問、芸術、宗教などの精神的な活動とその所産を指し、物質的な成果を文明と区別して使うこともあります。

このように、「文化」は非常に幅広い概念を含んでいます。

ややこしいですね。だから私は赤文字のところに注目して自分なりに考えてみました。

 

文化とは

人が時間を使って築き上げてきたもの。そして伝えられていくもの。

環境や人とのかかわりによって発展していくもの。 

 

佐渡川先生が「自分自身」と言われたのは、まさにこの「時間」をかけて培われた経験と知恵の総体ではないでしょうか

 

家づくりと文化

家づくりに関係する文化は大雑把に言うと3つだと思います。

 

  1. 外的要因の文化
  2. 設計者・工務店が持っている文化
  3. あなた自身の文化

 

1.外的要因の文化とは

日本国とか、その地域の風習、立地、風景、四季等自然要因とかです。

これらは、建物の立地や向き、屋根形状や色、仕上げ素材や家の形状、性能などに大きな影響を与えます。

この文化を無視すると、周りから浮いた家になってしまったり、10年以上経つとなんか格好悪い家になってしまいます。

 

2.設計者・工務店が持っている文化

これが、その設計者や工務店に依頼するかどうかを決める要因になると思います。

家づくりで何を重視しているのかです。

この文化を知るためには、過去の物件をたくさん見せてもらうこと、そして家づくりの考え方をじっくりと聞くことです。

例えばタマゴグミ、構造や性能、居心地やデザインのことも結構話をするのですが、一番最初にするのは資金計画とローンの組み方の話。タマゴグミの家づくりはお金で無理をさせないことを文化としています。

 

次に話をするのは、家のオーナー(主にご夫婦)が楽しく暮らせること。つまりタマゴグミの設計思想はお子様より大人の生活を重視する文化なんだとわかるはずです。

 

工務店や設計者が持っている文化は、変わることはありません。この文化を知った時「自分とは違う」と思われたら、ファーストプランも受けずにやめたほうがいいと思います。

※言い訳がましいですがお子様をないがしろにしているわけではありませんので、良い子は親の背中を見て育つ、という考えもと、親が生き生きと生活することを重視しています。(やっぱ言い訳か・・・)

 

さて、最後はあなたの文化についてです。

 

3.あなた自身の文化

あなたの文化といわれても、わかんないですよね。

実は簡単ですよ。今あなたが考えていること、それでいいのです。

漠然と、こんな生活をしたいとか、こんなことはいやだとか、子供とはこうしたいとか、休みの日はこんな風に過ごしたいとか。

「いやいや、そんなもの、要望じゃん。」

 

そうです、要望です。

ただ、あなたの文化がつくりだした要望かどうかを考えてほしいのです。

物心がついた幼少から今までの生活の中で、心から思うことかどうかです。

 

たまに、その要望って、SNSや検索で出てきたものじゃないの?

とか、どこか海外のホテルや非日常的なものを見て出てきたんじゃないの?

という要望があります。

それはそれでいいのですが、ずっと長く暮らすということを考えるとそれら要望の優先順位は下がります。

 

家づくりに影響を与える、それぞれの文化のウェイト

家づくりで重視される文化は

  1. 外的要因の文化
  2. 設計者・工務店が持っている文化
  3. あなた自身の文化

です。つまり項目として並べた順番です。

 

家の5割は外的要因 つまり法律や立地、自然的要因や風習など それに予算が加わり決まります。

次に設計者や工務店の文化です。割合でいうと4割程度でしょうか。

性能はもちろんのこと、素材や家の形、雰囲気がその文化によって決まっていきます。

 

「じゃあ、私の文化ってたった1割程度じゃん。」と思いますよね。

そうです、たった1割です。しかしそのたった1割程度が、その家を決定的に変えます。

多分イメージがつかないと思いますので、下に写真をつけます。

ルーブル美術館のモナリザ。こんな大きなところにポツンと飾られています。

 

あなたの文化はこの空間の「モナ・リザ」と同じです。

この77㎝×55㎝がこの空間のすべてを決めています。

 

いや~実は、私の家づくりの理想はこの写真そのものなんです。

ここにいる人たち、「モナ・リザ」に関心があるだけで、誰一人として周りの建物を気にしていないのです。けど、堅牢守りに快適に過ごせる そしてシュッと空間を確保して周り(建物)は存在しているのです。

 

家づくりをしていていつも思うのですね。家なんて堅牢と快適と確保だけのこして消えてしまえって。そうすれば、どんな人にも どんな地域でもピタッと合うのに。まあ、無理なことなんですけど。

 

→そんなことを書いたブログあります。よろしければどうぞ。 主張しないデザイン

文化は切っちゃダメなもの

人も世の中も変化し続けています。最近はAIのおかげで働き方や生活様式まで変わろうとしています。

今までの生活をスパンと切って、明日からガラッと変えることもできます。

 

しかし、あなたの文化は幼少期から続く今までの時間が作り上げてきたものです。そして、地域の文化、景色、風習もその土地が時間をかけて作り上げてきたものです。だから絶対に切っちゃダメなんです。

 

生活は徐々に変わります。その、徐々にがちょうどいいのです。

明日から急にガウンを着てブランデー片手にクラシック音楽を聴けって言われても・・・私は無理です。

 

さて、今回こんなことを書いたのはなぜでしょうか?

その答えと私の本音はメルマガでお送りします。

 

 

この記事を書いたのは

株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。

タマゴグミの詳しいことはこちらをご覧ください

家の無料相談会やっています

家づくりを成功に導く小冊子4冊セット無料プレゼント

土地探しのお手伝いもしています