COLUMN

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居心地の良さの設計

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子供部屋について考えてみる

 

家を建てるときどのようにに注文しますか?

「リビングは、20帖くらいほしいな。そして8帖の寝室と、2人の子供たちに一部屋づつ。家は家族の幸せのために建てるのだからね。

 

子供たちには部屋をひとつづつ、親は2人で1室。

お金は親が30年以上ローンとして払い続ける、なんか不公平な気がしませんか?

 

確かに子供はかわいい、私の2人の子供はもう社会人で東京と名古屋に暮らしています。その年齢になっても自分よりも子供を優先したいという気持ちになります。

 

さて、話を進めましょう。(おっ、今気づいた。下の写真は私が撮ったものですが小さな女の子、爪先立ちしている。バレイでもやっているのかな?)

半世紀前は「子供部屋」はほとんどなかった

50年ほど前の家は、子供部屋として用意された部屋はありませんでした。

 

住宅メーカーが出てきて、住宅が「商品化」したとき解りやすいものにしなくてはいけないと思ったのでしょうか、それ以降4LDKとか表現されるようになり、そして子供部屋が出てきました。

 

「4LDK」こんな言葉だと解りやすいのですね。昔はビジュアルでの宣伝もあまり発達していないころですので、主な表現は言葉での説明。

だから「うちの家は、20帖のリビングと、12帖の寝室、6帖の子供部屋2つが標準ですよ。」といったほうが説明しやすかったのではないかと予想します。

 

メーカーさんは、宣伝力もあるのでそのスタイルの家がどんどん売れ出したのでしょう、それに追従して地場工務店がまねをしだして今のスタイルになったのではと予想します。

 

アメリカの個室文化は?

今から15年ほど前、2×4住宅に興味を持った私は依然勤めていた設計事務所の所長に「アメリカに知り合いいませんか?2×4住宅の現場とホームデポ(日本でいうホームセンター)を見て来たいんです。」とお願いしたら、「おう、紹介してやる。」とある女性を紹介いただき、私はその人を訪ねて単身シアトルへ行きました。

 

シアトル市内でその方にお会いして「いつも、●●所長がお世話になっています。」と挨拶すると「いや~~、この前1度会っただけなんですよ・・」と。「あ~~そ、それは申し訳ございません。」と平謝りです。

その後その方の紹介で、3組のビルダー(大工さん)について一緒に2×4住宅を作ってきました。

 

その方の家にもお邪魔して色々お話を聞きました。そして知ったのは「日本の個室文化とアメリカの個室文化はまったく違う」というものでした。

下の写真は、その方の家のリビングです。

アメリカの家は親が一番

その方の家は、個室が3つ、キッチンと居間、物置といった間取りです。

1つの個室は親の部屋。

部屋にはシャワールーム トイレ クローゼット兼パウダールームがあります。その部屋は「親」しか入ることが出来ない部屋です。

 

後残り2つは子供が使っている部屋、大きさは6畳よりも狭いと感じました。そして、トイレもシャワー室も別に1つづつあり、それを子供が使うのです。

 

そしてルールがあります。

ルール1:部屋の扉は寝るとき、着替えるときしか閉めてはいけない。

ルール2:親の両親・友達が来て泊まるときには、部屋を明け渡すこと。その日はリビングで寝ること。

 

子供が使っている部屋はあくまでも親のものであり、子供には無償で一室を貸与しているという感覚なのです。さらには、18歳になったら学費以外一切渡さないというルールもありました。

これを知ってあなたはどう感じますか?

私はこの事実を知って、日本人に個室文化は合わないのでは ということです。

私の時代の不良の居場所

あなたは、中学生や高校生のときに「悪いこと」はしましたか?私はまじめでしたが、やはり少しだけは体験しました。

そのときのたまり場は、友人の家でした。 その友人の部屋は、本宅に隣接した離れ、親の目が届かないところです。夜な夜な集まって「お勉強」するわけありませんよね。ちょっとここでは書くことが出来ないことをやるわけです。誰の目も気にせずすごせる気軽な場所ですから。

ただ、あれがエスカレートしていたら と思うとぞっとしますが。

 

 

さあ、ここからです。50%以上の方に反感を買う内容です。

子供専用の部屋を与えるには、いい子にしてからじゃないと駄目だ。ということです。

批判される覚悟で言います。子供部屋を与えて、子供がその部屋に入って扉を閉める。そのことで、「ああ私は親としての役割を果たしているんだ」とホッとしているんじゃないかな?親として子供と交わることを放棄をしているんじゃないかなと思うのです。

 

親の責任は、子供部屋を与えることでなく、子供を立派に育てること なんですよね。

日本の親とアメリカの親は、文化が違うのです。アメリカは実力社会です。サラリーマンと言えども税金は自己申告、仕事は契約主義、だから子供のときからしっかりと自立させなければ生きていけない世界なのです。

 

日本は、気遣いの文化です。フスマ一枚で仕切られた部屋同士を「心配り」でしっかりと部屋として成り立たせる、相手を読む能力に長けた文化です。この差は簡単に埋まらないでしょうし、埋める必要もないと思います。

 

子供と一緒に過ごせる場所をたくさん作ろう

私としては、子供とはべったりと付き合ってほしいと思います。

それはいくつになってもです。

 

うちの子供たちは高校受験はもちろんのこと、大学受験の勉強もちゃぶ台でやっていました。

その近くで家内が座り、新聞を読んだり作業をしたりしていました。

一応子供が使う部屋はあったのですが、机の上はものでいっぱいで寝るときしか使っていませんでした。

 

その様子を見て、ひとつ不安がありました。「こいつら、自立できるか?」

大学は2人とも、遠方に行きました。

そして、今も彼らは自分でアパートを借りて一人で生活しています。むしろ自立できていないのは親のほうで、「じゅみちゃん、今度いつ帰ってくるの?」と帰れコールをするのは親ばかり。子供はちゃんと育つようです。

 

子供と一緒に過ごせる場所をつくればいい家になるんじゃないかなと思うのです。

それは特別な場所じゃなくてもいい、専用の場所でなくてもいい、例えばこんな場所とか

階段を40センチ広くするだけでこんな場所が出来ます。ここに子供の本、親の本を置く。中学生くらいになったら「あれっ、お母さん、こんな本を読んでいたんだ。」と子供が気づいてくれるかもしれません。

 

そしてもうひとつ。

親は楽しもう

子供は部屋が必要になったら余った小さな部屋に押し込めばいいのです。(絶対批判受けるな・・)

私たち親は自分たちが苦労して家を建てるのです。ちょっと贅沢してもいいんじゃないでしょうか。例えば、こんなのはいかがですか?

吹き抜けに浮いた2帖半の書斎。お父さんの居場所です。

 

もし、子供が年頃になったら「仕方がないな、お前がこの家を出て行く数年間だけこの部屋を貸してやる。」と言えばいいのです。

家に子供がいる時間よりもはるかに長くあなたはこの家に住むのです。あなたスタイルでつくるのが家づくりの基本と私は思います。

 

間取りって、結構色々考えることがあるんですよ。だから面白いのです。

 

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