木造の家 コンクリート造の家 鉄骨造の家 比較してみました。
2023年11月28日
先日ご面談頂いたお客様から「木造よりも鉄骨造の方が良いと聞いたのだけど」と質問を受けました。それで、こんな題材でブログを書いてみようと思いました。
木造が有利にならないように出来る限り公平に書こうと思いますが贔屓が出るかもしれません。
木造もコンクリートも鉄骨も施工してきました
今まで色々な経験をさせて頂きました。
鉄骨造ではある会社の体育館の施工管理・流通倉庫の施工管理・事務所の設計監理
コンクリート造では、超高層ビルの施工管理・病院の設計監理・RC住宅の設計監理
木造では・・・現在進行中でやっています。
全ての構造を設計したり施工したりその経験上、設計や施工上の注意点と長所短所が見えてきました。
いまから書く内容は、私の知識と経験上のものです。
鉄骨造の家の比較
鉄骨造の家には2種類あります。重量鉄骨の家と軽量鉄骨の家です。
重量鉄骨造の違いは部材の厚みと言われていますが大きな特徴は、耐力壁がいるかどうかです。
鉄骨造、特に重量鉄骨造の家は価値が高い家だと考えています。
■長所は■
間取りの自由度です。
重量鉄骨2階建てなら柱は4本、多くても6本程度でできてしまいます。
写真につけたのは、タマゴグミの事務所です。
倉庫の中に家を造る。こんな感覚の家づくりです。
家の角々に柱があれば後は自由。どこにでも壁をつくることができます。また将来のプラン変更も自由です。
軽量鉄骨の場合は、どうしても地震や風に対抗するかべを入れなくてはいけないので重量鉄骨のようには自由にはなりません。ただし木造よりははるかに自由度が増します。
倒壊することがまずありません
強い地震が来ても鉄骨が「ボキッ」と折れることはまずありません。倒壊して家の下敷きという可能性が極めて低いです。これは鉄の特性ですよね。
また同時に品質が安定していることも特徴です。
■短所は■
木造に比べてお高いです。
通常、木造に比べてお高いです。
断熱にご注意を
鉄は凄く熱を伝えやすい材料です。鉄骨部を外気に触れさせない断熱方法や軒とかを出すときに鉄骨が外に出ますので、その部分の処理が必要となります。
■施工時の注意は■
重量鉄骨の場合は一つです。
鉄骨をつくってもらう工場が認定工場であることです。
認定工場は、S・H・M・R・Jとありますが、SやHである必要はありません。Jでも3階建て住宅までならOKです。
軽量鉄骨の場合
名の通ったハウスメーカーさんを選ぶ。
これにつきます。
軽量鉄骨は現場というより、工場で造られ来ることが多いです。あと、軽量鉄骨の場合は家の中にも必要な柱や壁が出てきます。将来を見通した設計を行うことが必要です。
コンクリート造の家の比較
設計事務所時代はコンクリートばかりやっていました。
コンクリートは建築士にとっては魅力ある材料です。
■長所は■
堅牢です。
車がぶつかっても普通車なら家の勝ちでしょう。
地震や風にも強いです。
地震で倒壊することはまずありません。また、コンクリートの家は殆どが構造計算をそれなりの人がやっています。
風にも強いです。それが証拠に沖縄の家はつい最近までコンクリート造が殆どでした。
造形が魅力的です
コンクリート住宅は、コンクリートそのものが表情を持っていますので、凄く魅力的です。
有名な建築家の安藤忠雄先生は、コンクリート打ち放しの建物を多く設計されています。何の変哲もないコンクリートの壁に光や陰で表情をつけて凄く魅力的な空間をつくっています。岐阜では長良川国際会議場が有名ですね。
下の写真は私が設計事務所時代に設計させて頂いたコンクリート造の3世帯住宅です。
しっかりした外断熱にすると熱環境も良いです
コンクリートは重量のある材料です。熱をためやすいことが特徴です。この性格を利用して冬の昼間に太陽熱をコンクリートに十分あてておけば、夜ほんわか温かい壁が造れます。
この逆に、夏に太陽光発電を利用してエアコンをしっかりと使い壁を冷やすことで、夜にひんやりした壁をつくることもできます。
■欠点は■
価格が高いのは皆さんもお気づきかと思いますのでその他を
雨漏れに弱い
えっ?コンクリートだから雨に強いのではと思いますよね。確かにコンクリートは雨にぬれても腐りません。しかし、雨もりには非常に弱いです。
コンクリートの性格上ひび割れは出ます。その間から水が侵入したら、内部はどこから出てくるのか解らないのです。「あっ、雨漏れはここだ。」と特定できないことが多いのです。
またコンクリートは中性化と言って、年々もろくなります。(この仕組みを書くと長くなるのでやめます)コンクリート造は永久的な工作物ではありません。
メンテナンス費用が高い傾向にある
コンクリートの外壁塗り直しや屋根防水のやり直しは必須です。やらないとダメなのです。
手遅れになると何ともできなくなってしまいます。コンクリート打ち放しの外壁は格好いいのですが、長く使う住宅の場合はお金に余裕がある方以外はお勧めできません。
間取り変更が難しい場合がある
住宅のコンクリート造の場合のほとんどが壁構造という方式です。コンクリートの壁で家が構成されます。柱と梁をかける方法は稀です。
ということは、最初の設計から間取りが変更できない場合が多くなります。
断熱方法次第で夏暑くて冬寒い家になる
コンクリート打ち放しの家って格好いいですね。けどあれは、たまにお邪魔するのがいいのであり住むとなると結構つらいです。 私は10年以上前にコンクリート打放しの事務所で仕事をしていました。室内は、夏の夜はモワット暖かく、冬の夜はキンキンに冷えていました。エアコンは全く効きません。
欠点が多そうですね。けど、コンクリートの住宅は本当に魅力的なのです。
誰かつくりませんかコンクリート住宅。私にやらせてください、格好いいもの造りますよ。コンクリート住宅の設計と管理経験は十分持っております。
■施工で気を付けること■
これを書くと、凄い量になります。というのも、コンクリート住宅のほとんどが現場施工だからです。つまり管理によって品質が凄く大きく影響されるのです。
ですので、注意事項は3つです。
- コンクリート住宅の実例をたくさん持ち、温熱環境にも詳しい設計者がいるかどうか。
- コンクリート住宅の経験が豊富で知識が高い現場監督がいるかどうか。
- 断熱は外断熱1択。(住宅の場合)
あとできれば、住んで5年くらいのお客様を訪問させてもらうことです。本音が聴けますので。
木の家は・・書きません
このホームページ全てが木の家ですので、あえて書きません。
最後に、よく言われている誤解は書いておきます。
木の家は鉄骨やコンクリート造よりも地震に弱い
確かにそうかもしれません。ただし、木の家も許容応力度計算の耐震等級3のレベルにすれば大きな地震でつぶれることはないのです。
木の家は火に弱い
素材だけをとればそうかもしれません。コンクリートはどんな火でも燃えることはありません。
けど、コンクリート住宅にも窓はあるし すごい火事の場合は室内にとどまれるわけでもありません。なお、鉄骨造は木造同じく火には弱いです。
コンクリートの家は不健康になる
それも迷信です。コンクリートのみで断熱もない空間での比較の場合をとっていますので、比較になっていません。第一コンクリートの家が不健康だったら都心のマンション住まいの人は全員不健康ということになってしまいますよね。
どの家でも一長一短あり、どれが一番とは言えないのです。
選ぶのはあなたの感性次第です。
どれを選んでもよいのですが、それぞれに造り方があり全て違います。
特にコンクリートの家は管理次第で大きく変わります。良い業者さんを選ぶのが一番ですね。