二世帯住宅の勘所 【実例図面付き】
2023年11月08日
タマゴグミでは二世帯住宅を新築やリノベーションをあわせて10棟以上建てさせて頂いています。
そんな経験も併せて、二世帯住宅の設計のコツを書きます。
いつも言うことですが、この文書は私の持論が結構入っています。この考えを絶対とは思わず参考にしていただければと思います
性格の不一致っていうやつは
さあ、今回も変な内容で始まったブログ。素直に二世帯住宅のコツを書けよと思われるかもしれませんが、二世帯住宅を考えるにこれが大前提なのでチョットだけ聞いてください。
現在日本の離婚率は35%実に3組に1組の割合です。そして夫婦の離婚原因で半数を占めるのが「性格の不一致」。ということは少なくとも6組に1組は性格が合わないなと思いながら暮らしているのです。 夫婦ですらです。
じゃあ、義理の親さんとなったら、 簡単に想像できますよね。合う訳がないと考えたほうが自然です。
後からも出てきますが、夫婦や親さんとの性格がぴったり合うなんていうことは私は無いと思っています。それに気づくのに半世紀かかりました。
自分と相手がぴったり合うこと自体おかしいのです。そう考えられるようになってから、夫婦間のコミュニケーションは一段と上がりました。
二世帯住宅は特殊な建築物
昭和の初期であれば同居なんて普通のことでした。しかし、現在同居は少なくなってきています。
ただ、ここにきて物価高になり家の価格がとても高くなってきました。
今後、親さんと一緒に暮らす2世帯住宅は増えていくと予想します。
それでは二世帯住宅をつくるにあたって気を付けることはなんでしょうか?
【二世帯住宅は特殊な建築物と理解してください】
2世帯住宅は令和の時代では特殊な建築物といえます。
なんせ、一つの家に2家族が暮らせるようになっているのです。
二世帯住宅を建てて数十年後に、親世帯の暮らしていた場所が空きます。そこにお子さん夫婦が入ってくることは奇跡に近いことと思います。
二世帯住宅は数十年後に、大きな空き室ができる可能性がある特殊な建築物なのです。
【他人同士が暮らす非常に難しい空間】
2世帯住宅を建てる時は特殊なヒアリングをします。息子さん家族との同居の場合は、息子さんの奥さんだけに本音を伺うこともあります。
いくら伺ったからと言って、予算や敷地の関係でどうしようもないことはたくさんあります。けど、工夫出来ることもたくさんあるからです。
人はなぜもめるのでしょう?
これは私の持論ですが、「話せばわかる。」ということはないからです。
人はそれぞれ違います。話し合って解るのは、「自分と相手は違う。」ということです。
1+1=2と誰もが納得する答えがある場合ですらもめることがあるのです。
よく考えてみてください。自分たちが好きで選んだ夫婦だって、分かり合えることは少ないのに他人の家族に一人だけで乗り組んでくるお嫁さんやお婿さんがどれだけ大変か。
こんな考えを前提にして、2世帯住宅を考えればきっと良い答えが見つかるはずです。
万が一の時の相続 3分の1 4分の1問題
相続についても知っておく必要があります。
例えば、家をご主人名義で建たとします。そして土地はご主人のご両親の持ち物。もし、ご主人が急になくなったらどうなるでしょう?
奥さんにお子さんがいる場合は、家は奥様とお子様のものになります。しかし土地はご主人のご両親のままです。その土地は将来的にはご主人の兄弟に相続されることになります。
もし夫婦間にお子さんがいなかった場合もっと厄介です。ご主人の財産、つまり家も含めて3分の1が親さんの権利になります。
遺産協議はできるのですが、簡単にはいきません。たとえ遺言があったとしても、遺留分の6分の1は逃れることは難しいでしょう。
万が一の場合に家はどうなってしまうのか。
これらを考えておく必要があるでしょう。
電気・水道代金
電気代・水道代の分配も問題になります。
完全分離の二世帯にした場合、電気は電柱からの別引き込みも可能です。また、小メーターをつけ電気代を分ける方法もあります。
これは、一般的には基本料金がダブルでかかる別引き込みのほうが高くなると予想できるのですが、契約ワット数によっては別引き込みのほうが安くなる場合があります。
水道の場合は引き込みを一本にして小メーターで使用量を計り料金を分ける方法が一般的と思います。これは役所の事情もあります。
どちらにせよ、完全分離型や半分離型の二世帯はおたがいの使用量を解るようにしておいた方が良いでしょう。
二世帯住宅のスタイルとお勧めは
ここからは持論が出ます。
二世帯住宅を設計するとき私のお勧めは完全分離の二世帯住宅です。
後から事例を三つ出しますが、全てこのタイプになっています。
次にお勧めするのは、キッチンやお風呂を共有する、ベッタリ共有型です。
特に、奥様の親さんとの同居の場合は問題は起こりにくいです。タマゴグミでもこのタイプの二世帯が一番多いです。
一番お薦めできないのは、1階と2階で分離させて内階段でつながっている等の分離型です。このタイプで実際に問題を持った方に数組お会いしてるからかもしれません。
完全分離型二世帯の問題点
利点は皆さんお分かりかと思いますので、問題点を書きます。
1,価格が高くなる
設備も倍・配管も倍・面積も大きくなりがち、2件建てるよりは安いけどという感覚の金額です。
2.相続税が高くなる
都心等土地価格が高い地域は要注意です。
完全分離型の二世帯住宅の場合、別居として見られますので相続税が高くなる場合があります。
3,賃貸として扱うときの注意
住宅ローンがまだ残っている場合は、空いた部屋を賃貸にすることは難しいとお考え下さい。というか、だんまりでやったら絶対ダメです。全額返済を求められることもあります。
ただし、銀行に相談してローンの種類を変える等の方法を取れば可能です、
タマゴグミのボツ事例を見てみよう
さて、私が実際に設計した事例を出します。
これらの図面は事情により(まあ他社に負けたということですね・・・)ボツになった事例です。プランが悪かったわけではありません。お金が合わなかったために没になった事例です。
【お母さまとの同居】
中庭を挟んで親世帯と子世帯を分けました。
玄関は土間タイプとなっており共有されていますが、土間の先に鍵付きの玄関もどきをつくりそこで遮断されています。
このプランはお母さまに配慮したプランです。小さいながら快適な空間をつくり、お母様が落ち着いて暮らせるようにするのが狙いです。
遠い将来ワンルームで賃貸することも可能です。
【別棟に近いタイプ】
本来は別棟としてもよいのですが、敷地と接道の関係で一体としています。
ご両親とご夫婦の二世帯のため両社ともしっかりとしたスペースをとっています。
中央のデッキを共有部分としてその他は殆ど分かれています。
立地が良ければ将来的にファミリー層に賃貸は可能ですが現実を考えると、ご自分のお子様や親類のご夫婦に賃貸することができればと考えたプランです、
【街中二世帯プラン】
街中に計画した2世帯住宅です。
家はくっついていますが、完全分離です。
遠い将来 親さんの介護が必要になった時赤い丸部分を壊すと行き来できるようになります。
街中ですので将来的な賃貸も十分可能と思い計画しました、
何度も打ち合わせるうちに、「これならもうちょっと予算を増やして2棟建てたほうがいいのでは?」という結論になり、土地を2つに分けて親世帯・子世帯2棟の家を建てることになりました。