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病気と家について考えてみる(科学物質化敏症の質問を受けて)

ある見学会でいただいた質問

先日、岐阜市で完成見学会を行ないました。そのとき、お客様より次のような質問を受けました。「化学物質化敏症の場合、家づくりに対してどんな注意をしたらいいのでしょう?」

正直申します。このご質問はムチャクチャ怖いのです。私は医学の知識を持っておりません、ましてや医師や薬剤師の免許も持っていませんので私の知識を伝えることが良いかどうか、いつも迷います。ですので、正直にその点を伝えながら知っている限りのことをお伝えしました。

私が思っている基本です。※ここからの内容は、違うホームページにも一度書いた内容です。

病気を治す家は存在しません。家は薬ではありません。温熱環境で事故が起こりやすい家、起こりにくい家はあります。病気になりやすい家なりにくい家は存在すると思います。ただし証明、つまり一人二人のお医者さんが奨励しているのではなく、医学的症例をたくさん持つ家は私は確認していません。

自然素材の家は病気を直す力があるの?

よく、自然素材に家に住んだらアトピー性皮膚炎が治ったという事例を聞きます。タマゴグミの家でも事例があります。これは、アトピー性皮膚炎の原因から考えると説明できるのです。

アトピー性皮膚炎とは、皮膚のバリア機能が低下した状態のところに、ダニの死骸やフン、その他の細かなホコリ等がくっつき炎症を起こす状態です。なお、その他VOCやストレス等でも起こりますし、まだ解明されていないこともありますので全てがそうとは言い切れませんことをご了承ください。

と、言うことは、ホコリ等が少なくなれば自ずと症状は軽くなるわけです。また、ある程度保湿した室内であれば肌の乾燥も軽減されバリア機能が少し強くなるのです。新築の家は当然ホコリは少ないでしょう。また、自然素材は静電気を発生しにくいので、ホコリが壁や天井にくっつくことが少なくよりホコリの発生が少なくなるのです。結果、アトピー性皮膚炎が治まることがある。 ということです。

先生に指摘されたこと

実は10年前に「家でアトピーが治る」と私も言っていたのです。ある手法を使って家を造るのですが、私はその技術の開発者と親しくそして理屈も全て聞いて「これは科学的根拠に基づいている、間違いのない方法だ。」と確信していました。(ちなみに、今もたまにその技術を使っています。表には出していませんが・・・)

私は親しくさせていただいてるアレルギーに強い小児科の先生にその話をしたのです。そしたら普段温厚な先生の顔色が変わりました。「井手君、君の言うその工法はどれだけの症例を持っているんだ。私たち医者はたくさんの症例を元にして患者さんに対応しているんだよ、根拠もないことを言ってはダメだよ。」

そのとき「ハッ」としました。アトピー性皮膚炎やアレルギーで悩んでいる患者さんがこの先生のところに、わらをもすがる思いで来ているんだ。そんな方々に根拠もないことを売り込んでいいのだろうか?それも、他住宅会社との差別化という自分たちの身勝手な理由だけで。

それ以来、私は住宅屋として家で病気が治るということは一切言えなくなりました。

しかし、

住宅の作り方で健康に害を与えることはあります。例えば各部屋の温度差によるヒートショック、例えば換気不足での二酸化炭素中毒等健康障害、例えば壁体内結露によるカビの発生・・・ これらについては建築屋として可能な限り取り除かなくてはいけない内容です。(これらについては後々書いていきます)

さてさて、最後に化学物質化敏症について私の知る限りのことを書いておきます。

よくわれわれの業界の人が、化学物質化敏症とシックハウスとアトピー性皮膚炎とアレルギーとごっちゃ混ぜに考えている人がいます。基本は、アトピー性皮膚炎はアレルギーの一種ですし、シックハウス症候群は化学物質過敏症の一種です。そして、化学物質化敏症は自律神経に影響を与え、アレルギーは免疫が暴走するという、症状は同じように見えても異なるものである、ということを理解しなくてはいけません。両者とも、原因特定は難しく、アレルギーはなんとなくこれかなと解っても化学物質化敏症はお医者さんでも特定するのが難しいといいます。

やはり病気のことは、お医者さんに任せることが大切だと思います。

化学物質過敏症やアレルギーの方の家造りは

一番のお勧めは、主治医と組んで行なうことです。

自然素材だからといって安心ではありません。特に化学物質過敏症の方は、杉やヒノキ特にヒバなど強くVOCを出す樹種で不調をきたすことがあります。何に反応して何が大丈夫かはお医者さんに調査いただいて、それらを排除して家を造るしかありません。

また、立地も重要です。自然がいっぱいな田畑や果樹園の近くは消毒を使う場合が多いです。その消毒に反応される方が多いです。

また、家は素材よりも掃除のしやすさや、風通しのよさ、つまり間取りに重点をおくことをお勧めします。掃除がしやすく風通しがよければアレルゲンの発生を抑えられます。

以上、一般的なことを書きましたが、一応自然素材の家を建てる立場ですので宣伝もしなくちゃいけませんね。

自然素材の良さを強いて言うのであれば、自然素材は静電気を起こしにくい素材だということです。ですので壁や天井にホコリ等が吸着せず、掃除がしやすいということでしょうか?

今日はここまでです。