全館空調を壁掛けエアコンでやってみる

2025年12月12日

10年後に困らないシステムを提案したい

２０２６年に着工するお客様のところで、空調の新しい試みを行います。

お客様に許可を得るためお話したら「いいことなんでしょ。やっちゃって～」でOKをいただきました。

余談ですが、新しい試みはちょくちょくやります。このような空調のこととか、仕上げ材料のこととか。現在進行中の物件も、下地材を利用した外壁仕上げを行います。

新しい試みのお客様のリスクは、今まで見たことがないもの、体感したことがないものができること。私たち施工側のリスクは、だめな場合に取り替える覚悟、空調の場合などは通常の仕様に戻せるようにバックアップを取っておくこと、ただそれだけです。

家庭用壁掛けエアコン２台で空調を賄う計画

なんだ、目新しいものじゃないじゃん。と思われますよね。

そうです、目新しくありません。ただ、タマゴグミにとっては計画立てて行うのは今回が初めてに近いです。

特に、個室にきちっと対応するのは初めての試みです。

エアコン能力の選定方法は

まずはエアコンの能力と台数を決めます。

家の㎡数ｘ０．０４８KW

これは覚えておくと便利な概算式です。等級６程度の家のエアコン能力を選定するために使用する概算式です。

今回のお宅は９０㎡　よって９０ｘ０．０４８＝４．３２KW

１４畳用エアコン１台で賄える計算です。　　が、1台では夏に壊れてしまった場合、命の危険性まである状態になりかねません。よって、14畳用エアコンを1階に1台、2階に1台使用します。

小屋裏エアコンをやろう

ロフトを作りその中にエアコンを入れて空気の重力差（冷たい空気は重く暖かい空気は軽い）を利用したシステムです。

今回はカウンターアローファンをつけて、床下と小屋裏のエアコンを結びます。

図にするとこんな感じです。

この考えを検証しようと、実際に空調のみを設計施工している会社さんの設計者と空調機器を扱っていて施工も請け負っている会社の担当者　二名にこの案を説明しました。

実践している業者さんは、いろいろな方法を知っており、今ちまたで行われている方法や有名な建築家たちが行っている方法にも熟知しています。それらの利点や欠点、特に問題になったことをたくさん知っていますので、一番頼りになります。

結果は　ボツ　浅はかな考えでした。

両者の意見とも「危険ですからやめたほうがいいです。」ということでした。

”ああ、調子に乗ってナローファン買っちゃったんだな。どうしようかな。”

わたしが計画した小屋裏エアコンの問題点

最近の温暖化現象で夏の除湿による結露水がすごい量になっており、カビの原因や配管の故障の原因になっているようです。

家庭用壁掛けエアコンを利用した場合、早いもので１年目で壊れてしまうという事例もあったようです。

主な原因は、埃と水が混ざった水が詰まりや機器を痛めたりカビを発生さてているのではないかということで、空気清浄機を入れたりいろいろ工夫を重ねたそうです。それでもあまりうまくいかなかったそうです。

空調設計者のおすすめはアメニティビルトインエアコン

アメニティビルトインエアコンとは

アメニティビルトインエアコンは、天井や壁に埋め込まれるタイプのエアコンで、室内機は天井裏などに埋め込み、そのまま配管類は見えない部分を通って室外機へと接続します。

このタイプのエアコンは、見た目がシンプルで、配線や配管も埋め込むため、部屋の中がごちゃごちゃせずすっきりします。また、通常のエアコンの場合、取り付け場所が限られてしまいますが、埋め込みタイプの場合は取り付け場所を気にする必要がありません。

さらに、壁掛けエアコンは取り付け場所によっては部屋に風が行き渡らず、部屋の奥まで冷暖房効果が行き渡らないことがあります。一方、天井埋め込みタイプの場合は、天井から部屋全体に広く風を行き渡らせることができるため、高い冷暖房効果が得られます。

（ダイキンHPより）

アメニティビルトインエアコンとダクトを使用する方法を詳しく聞きましたが、すごくいいですよ。

建物の断熱性能や窓の位置、窓の性能、気密値をすべて把握して、それに合ったダクト配置を行い　風の流れを設計し、温度むらを極限まで減らします。

さらには、施工後に実際に機械を動かし微調整を行い極限まで設計値に近づけます。

家の性能は高いに越したことはありませんが、UA値０．５５程度から可能です。断熱性能がそこそこの物件でもエネルギーが余分にかかるだけであり、快適は担保できるということです。

価格はやはり高いです。タマゴグミの家２５坪程度の家で、施工費込で最低限１７０万円かかり、通常設備だと２００万円を超えます。

（そう考えると、俳優のたくみさんが変なメガネをかけてCMしているあの〇空調は、結構お値打ちだと思います。１５０万円ほどで設置できます）

けど、タマゴグミは家庭用の壁掛けエアコンじゃないとダメなんだ

家庭用壁掛けエアコンでやらなきゃ意味がない　と私は考えています。

ですので、今回はアメニティビルトインエアコンは採用しません。もし、お客様からの依頼があった場合、デメリットを詳しく説明して、そのうえで採用してもらおうと思います。

理由はお金です。それも最初にかかるお金でなく10年後のお金です。

【私の経験】

意匠系設計事務所の家はとにかくシンプル　すっきり　を求めます。壁掛けエアコンは、不格好で設計者の天敵なのです。

だから普通の家庭でも天井カセット式のエアコンを活用していました。（すみません、普通の家といっても、20年以上前で5000万円以上する物件が主でしたが）

そのエアコンが結構高価なのです。

設計事務所を退職して、たまたま以前設計したお宅へ行く機会がありました。その時見た光景は、天井の壊れて動いていないカセット式エアコンと、頑張って動いていた後からつけられた壁掛けエアコンです。

＝エアコンが壊れるのは大体10年程度だからです。＝

あなたのお子様は何歳になりましたか？

例えば小学校2年生と小学校4年生とします。10年後は？　もしお二人とも大学に行くとしたら、下の子は大学1年ですね。上の子は大学3年生　「お金が飛んで行ってしまう・・・」という時期なのです。

その時にエアコンが壊れて、「エアコン本体で３０万円ね。取り付け費込みで・・・４０万円！」

同じ能力の壁掛けエアコンなら15万円もかからないでしょう。

＝メンテナンスできますか？＝

ちょっとお尋ねします。最近エアコンのフィルターいつ掃除しましたか？そうです、今あなたの目の前についているエアコンです。

アメニティエアコンがメンテナンスしにくいわけではありません。隠れているから人は忘れるのです。

脚立をもっていって天井点検口を開けて、もしくはロフトによじ登ってふたを外しフィルターを引き出し・・・やりますか？

特に空気清浄機を取り付けた場合少なくとも1か月に一度はフィルター掃除をしないと効率がガタ落ちです。

たとえ床下の点検口にしても同じことです。

床下点検口はどこにつけますか？　居間のど真ん中ですか？　一番目立つところとしても洗面所の床ですよね。通常は物入れの床とかです。

空調屋さんに聞いた話です。第一種換気扇（外から入ってくる空気も、外に出す空気もダクト方式）のフィルターを1か月に1度掃除している人は10人に1人もいないとのことです。

エアコン2027年問題　2029年問題

エアコンの省エネ義務化がさらに厳しくなる予定です。2027年には家庭用壁掛けエアコン、2029年にはマルチエアコン・アメニティエアコンの省エネ義務化が厳しくなります。

それにより価格が相当上がるそうです。

多分今のように6畳用の壁掛けエアコンが取り付け込みで7万円とかはなくなり、下手をすると倍の価格になるとのことです。