主張しないデザインに感動【太宰府天満宮】
2025年05月18日
消えている建築は私の理想
私の中で究極のデザインは存在しないと思われることです。
何言っているかわかりませんよね。
もうちょっと砕くと
そこにいる人や物がすべてを作り上げる要素となり、建築はあくまでも保護するものになりきることです。
ああ、やっぱりわかりにくいですね。
けど、見つけたんです、九州で。 そのことを限りなく近く実現している建物を。
今回のブログは、私が設計したものでなく 藤本壮介先生と藤森照信先生の設計した物件を事例として挙げています。
また、両先生の設計コンセプトとは違うことを言っているし、ちょっと生意気なことを書くと思いますが、それは大目に見てください。
このブログを読むと、「ああ、建築士ってこんなこと考えながら設計しているんだ。」ということが解ってもらえると思います。それでは始めます。
3年だけの建築 太宰府天満宮仮殿
数日前にたまたま博多に行く用事があったので、ついでにどうしても見たかった建物を見てきました。それは、太宰府天満宮 仮殿 藤本壮介先生が設計された建物です。
それではどうぞ!
まったく何のことかわからないですね。じゃあもうちょっと引いた写真を。
凄いでしょう!!! 建築が無い。もう一体化してなくなっている。
屋根の上の木々の上の方のチョロッと見えているのが改装中の本殿です。
この建物の設計趣旨やコンセプトは、藤本先生が語っているのを見てください。
ちなみにリンクで見れる写真は、2023年竣工当時のものです。後ろの本殿もありませんし、木々もここまで育っていません。
建物の主役は誰か
建物の主役は誰なんでしょうか? これが最近抜け落ちていると思っています。
例えば住宅。
住宅の主役は、住む方です。そして家は住む方の個性が作り上げていくものです。決して建築屋のショールームでもエゴでもありません。
ああ、いい家だな。と思えるのは家族が入り、そして家族の個性(物・音・木々)が入った時です。
すっからかんの時や、なんかすごく高そうな家具や照明で飾りつけをしたとき「おおっ!」と思える建築は まあいいことはいいんですが、ここまでのクオリティではないということです。
この、仮殿をつくる時、藤本先生はこんなことを言っています。
「1100年以上の歴史がある太宰府天満宮に新たな建物を加えるとなると、どうしても違和感が生まれてしまう。その時に、自然を通してであれば調和することができるのではないかと考えました。」
違和感 この言葉、建築をつくる時非常に重要な感覚です。
家を選ぶとき、ぜひこの感覚を持ってほしいのです。
住宅見学会に行ったとき、
「この家、凄く格好いいけど なんか周りと違和感があるな。」
「この居間、すごく広々していてや使いやすそうな機器がいっぱいだし、シックな床なんだけど、なんか違う。」
おそらくこのブログを読んでいるあなたは、結構センスも良いですし勉強熱心だと思います。
そうなると、どうしても非日常的な一瞬の感動が強く印象に残ることが多いと思います。
建築、特に住宅は日常の繰り返しです。日常をつくるには違和感がないことが大切だと思います。
太宰府天満宮仮殿の主役は
すみません、ちょっとわかりにくいですね。
ちょうどお祓いが行われていたのですが、うまく写っていません。
もし現地に行くことがあれば、ちょっと立ち止まってでもお祓いの様子をのぞいてみてください。
凄く引き立って見えるのです。
多分、建築が自然に溶け込んでしまい、内部の色が黒で存在感が薄らいでいるからだと思います。
これはあくまでも私の考えですが、
建築なんて存在感がなくていいんです。存在感がなく、あなたの生命と財産を守る。それが建築の仕事だと思います。
設計するとき、何とか私たち設計者のエゴを消そう消そうと努力していますが、まだ消し切っていないというのが今のタマゴグミの現状です。
何をやろうとしているのか
理想の空間は、真っ白なキャンパス。
あなたが住んで色がついていく。それはどんな色でもいいです。そして5年ごとに変わってもいいです。それに耐えうるデザインをしたいと思っています。
外観は周りに同化して周りを誘い込むように
決して同じ家を建てるという訳ではありません。
屋根の流れをあわせたり、植栽を使い周りとの境界をぼかしたり。周りと一体になるものが理想です。
と、偉そうに言っていますが
外壁に木や塗り壁を使うことが多くなってきました。そして、内部も自然素材をふんだんに使い色も統一しています。
タマゴグミの設計は、自然素材や色に何とか助けられて 没個性をギリギリ実現しています。
自然素材は手触りがいいとか、健康を害さないとかあるのですが、本当の理由は主張しない住宅を造るには、そこにあっても違和感のない素材を使うしかなかった。それだけです。。
他にもある、主張しないたてもの
ちょっと感じは変わりますが、藤森照信先生が設計した ラコリーナ近江八幡です。
あなたも行ったことあるかもしれませんね。
屋根の上に草が生えてる建築をよくつくっている人、で有名なんですが私はやっぱり「建築を消す設計」としてとらえています。
多治見モザイクタイルミュージアムも藤森先生の設計です。
これらの建築から参考になるのは「周りとの同化」です。
周りが無いと成り立たない。景色が無いと成り立たない。
凄いなと思わせる建築です。
私としては設計するとき、周りを軽んじないということを気にしています。
周りがあるからこそ、この建物がある。そんな風に見られるのが理想です。
ごちゃごちゃと書きましたが 結論
建築の主役はだれかということを常に考えて設計したい
タマゴグミとしては主張しない建築を目指しています
周りに溶け込む建築をつくりたい
住宅はあなたが100%主役です。あなたの思いを入れて家を造ることが良い設計だと思いますまt。
ただし、それはあなたの希望や仰ることを全て叶えることではありません。
設計者として、あなたを知り、それを表現できたらと思っています。
ちょっとテンションハイのブログになってしまいました。
ご相談 いつでも受け付けています
タマゴグミでは、家づくりを始めたばかりの方の相談にのっています。
遠慮なくお申し込みください。
この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。