設計のかなめ 駐車スペース 実例から考える
2023年08月28日
駐車スペースの位置を考えてみよう
下の図は、岐阜市で実際に建てたお宅の配置図です。ただ、第一案ですので実際に建ったお宅とは間取りや大きさは変わっています。
下が南です。そして薄い灰色の部分が道路です。
メインの駐車場を北にもっていっています。その分、家が全体に南に寄ってしまっています。
なぜこのような配置をご提案したのかを説明します。
設計コンセプト
設計をするとき、お客様に話をきいたり、敷地を見に行ったりして設計のコンセプト(基本となる考え)をつくります。
今回のプランで、駐車スペースだけに関する設計コンセプトを抜き出してみます。
【鷺山の家設計コンセプト 駐車スペースのみ】
- 常時ある車は1台(現在は2台になっています)通勤では使わず買い物等で使用
- 誰かが来た時にとめてもらうスペースは欲しい
- 車には興味があるが、鑑賞したいというまではない。
- 敷地は柿畑。すぐ北には、お隣さんがある。
こんな感じでした。
後から家を建てるものとして
私が最初に注目したのは、お隣さんとの関係。
「南のさほど大きくない敷地に家が建つのだから仕方がない」と言ったらそれまでなのですが後から住まうものとしての「配慮」は必須だと思っています。
日影にはなってしまうのですが、その日影になる時期を少しでも少なくする、そして圧迫感がないようにする配慮ができるのであればしたいと考えました。
駐車場を北にもっていくことによって、3メートル近く間が空けられると考えお客様に提案。快くご理解いただきました。
家づくりはまちづくり
私は常にそんな思いで設計しています。実はこの北の家はほぼ空き家状態でした。そんなに配慮しなくてもと思われるのですが、次に住まう人やその土地に新たに家を建てる人にとって、きっと良い印象を与えるはずです。そしたら、空き家や空き地になっている時期も少なく、まちづくりに貢献できると思っています。ちょっとした配慮は、地価価値を上げ、地価価値が高いところには良い街ができると私は思っています。
居間から車は見せたくない
タマゴグミはお庭を取り込んで居間の計画をすることが多いです。
居間からお庭を見たとき、木々の後ろにデ~ンと車があったら興ざめしてしまうなと思いました。
北に車を持っていくことで、視界から車が消えます。
とはいっても、今回のプランから行くとしたの下の写真と同じく目かくし壁がありますので、たとえ南に車を置いても見えませんが。
駐車スペースと設計
駐車スペースを決めた要素で一番大きなものはお隣さんへの配慮です。
そのあとは・・・・誤解を恐れずいいます。とってつけた要素です。
もう一度配置図を見てください。
駐車スペースから玄関へのアプローチ、絶妙に近くていいですよね。
実際は、北側の駐車スペースには低い屋根がつき、玄関まで濡れずにアプローチできます。そしてお隣さんとの距離はさらに離れることになりました。
なぜ、このように絶妙な位置関係ができたのか?
それは、駐車スペースを決めたからです。
駐車スペースを決めることで、玄関位置が決まり、ついでに水回りの位置も決まりました。
繰り返しになりますが、再度言います。
玄関の位置を決めたのは駐車スペース。つまり駐車スペースが決まらないと玄関の位置は決まらない。
設計にはこんな関係性があるのです。
住宅プランは外部との関係でできている
住宅の間取りは、それ単体では決まっていません。
敷地から見える風景、お隣さん、道路、そしてご要望。
それらから、駐車スペースや窓の位置、建物のおおよその大きさ、位置が決まり、そのあと間取りが決まっていきます。
駐車スペースを決めるということは、間取りを決めることと言っても過言ではないのです。
だから駐車スペースは設計のかなめなのです。
今回は写真少な目ですみません・・・