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居心地の良さの設計

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家の計画に大切な考え方「癒す」と「満たす」

4年前に書いたブログを引っ張り出してきました

たまに、過去のブログをみたりして、あの時は何を考えていたのかを思い出しています。

今回は、2019年、4年前に書いたブログに加筆してアップします。

 

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2019年ブログより

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なんかややこしい題材ですよね。

けど言われてみれば「あ~なるほどね。」とわかってもらえる内容です。家を計画するとき、特にデザインや素材、キッチンとかの機器、仕上げなどを考えるときには役立つと思います。

 

ただ、これは私が考える内容です。正しいことと鵜呑みしないでくださいね。

さて始めます。なお、チョコチョコはさんである写真は年末の挨拶のときにタマゴグミのお客様の家を撮らせてもらったものです。

リピートする場所としない場所

先日名古屋で結構前から参加している経営者が集まる小さな会に出席しました。

そのとき、長年の知り合いが来夏に新しく旅館をオープンさせると聞きました。お客様にお出しする料理のことや運営のことを必死で考えているんだ。と仰っていました。そのあと、自由気ままに私の考えを聞いてもらったり意見交換をしていました。

 

家に帰ってからふと自分のことに置き換えてもう一度考えてみました。

「なんで私はあの長野のお気に入りの旅館には何度も行っているのに、違うホテルには一度しか行かなかったのだろう?決して悪いわけじゃないのに。」

 

悪ければ二度と行かない。これは明確なことです。けど、そんなことないけどやっぱりもう一度行こうとは思わない、思っても行動には移さない旅館や場所とか結構あるのですね。あなたもそんなことありませんか?

 

考えた結果、リピートする場所は満たされる場所から癒される場所に変化していたことに気づきました。

まず、私の考える癒すと満たすの違いを書きます。なかなか家の話や間取りの話に行かないですけど、もうちょっとガマンして読んでください。

癒すと満たすの意味の確認です

まず、満たすから考えてみます。

満たすをgoogleで検索すると 1.満ちるようにする。限界まで一杯にする。「腹を―」2.要求されるものを十分にかなえる。満足させる。「―・されない気持」 と出てきます。

 

ということは、ポッカリト開いた穴(例えば心にとか)を埋める。こんなことしたいな、あんなもの見たいな。という興味の穴を埋める。ということかなと思います。そして、穴が満たされれば満足して、暫くはいいや。ということになります。

 

例えばジェットコースター。

刺激の強い恐怖によって好奇心を満たすことだと思いますので、1回か2回乗れば通常満たされるわけです。

 

 

癒すとは、

辞書によると病気や傷を治すこと。とか、苦しみを和らげること。という意味ですが、今回は「癒されるわ~」といった安らぐような意味で捉えてください。毎日の仕事の疲れ、家事の疲れを癒すといった感じです。

 

先ほどの旅館の例をとってみます。本当は具体的なホテルや旅館の名前や写真を出して説明すれば「ああ、なるほどね」と解ってもらえるのですが、そんなことしたらちょっとまずいことになるので濁しながら・・

 

私はここ数年で10回以上、年に数回訪れる旅館があります。近いわけではなく、家から3時間弱かかります。

 

1回目の訪問。

料理はおいしいだろうか、雰囲気がよさそうだけどどうだろうか、サービスは良いだろうか、そしてついでに周りの観光地も気になります。こんな名所があるな、こんな美術館があるな。そして、たくさん動き、めいっぱい体験します。結果、心が満たされるものだったとしたら「ああ、また行きたいな。」と思います。

 

そして2回目、

近くの観光地も回ってしまったしあまり人が行かない観光地でもと回ります。この回で観光で満たされることはほぼ限界です。旅館のサービスはクオリティが高いところだとまだ大丈夫。満たされます。ただ、前回との違いが気になり不満を持つところもあります。通常はこの回で「さて、次の旅館でも探すか。」で終わります。つまりその旅館では、もう満たされることはない(少ない)ということです。

 

なぜか3回目、

観光するところもないので家を昼過ぎに出て、夕方直接旅館へ行きます。

見慣れた風景、感動することはありません。料理、約7割が前回と同じ、もしくは少しアレンジされた内容です。温泉、いつもながら小ぢんまりしているなと思いながらつかります。何もしない贅沢とかたまに聞きますが、単に何もすることがないだけでただダラダラと食事をしてお酒を飲んで、少し寝坊をして朝風呂に入ってそのまま帰ってきます。

 

4回目、5回目と3回目の行動が続いています。

何も変わらないけど、そこへ行くことで癒されるのですね。

癒される条件は人それぞれ違うとは思います。ただ、刺激を与えられ続けることで癒され続けることは難しいのではないかと考えます。

 

ディズニーランドは癒されるのか、満たされるのか。

唐突ですが、ディズニーランドって何回行きましたか? 私は若いころに多分3回ほど行っています。 お好きな方は2桁以上いっているのではないでしょうか?それだけ行けばアトラクションは全て制覇しお土産も殆ど買いつくすことでしょう。

なぜ、何度も通うのでしょうか?

正直なところ、解りません。それだけ強い魅力を放ち続ける何かがあるのでしょう。アトラクションを更新続ける力、社員の教育、見せ方やサプライズ、さまざまな努力があることだけは解りまが。

 

家を計画するときに大切なこと

やっと結論です。ここまで読んでもらっているので結論は簡単です。

家を購入する初期の感情は、最初は一時期の感情の満たされるために行なう行動です。だから厄介なのです。

 

瞬時の感情は満たしのほうがはるかに強いと思います。気分の高揚は行動につながりやすいですから。

 

これを見極めることは本当に難しいことだと思います。

けど、ずっと長く住んでいく家を造るときには本当に重要な見極めだと思います。多分家の性能と同じくらい、いやそれ以上に重要です。だからこそじっくりと考えてほしいのです。

たとえばこんなふうに考えてはいかがでしょうか?

「私が70歳になったとき、ここで癒されるだろうか?」「私が旦那とけんかしたとき、この空間は癒してくれるだろうか?」年の移り変わりや日々の何気ない色々なシーンを出来る限り想像し、そのときこの空間がどんな役割をするだろうかと考えてみたり、今まで行ったところ、例えば田舎のおばあちゃんのところとかはなんであんなに落ち着くのだろうとか考えてはいかがでしょうか?

「癒し」の空間に家をする

「癒し」の空間に家をするには、私は出来る限り家(空間)の存在感を消すことだと思います。

 

上質な肌着のようにつけていてもその存在感に気づかない(勝負下着じゃないですよ)けど、それがないと困る存在。

私たちは 外観デザインは日本に昔からあるデザインを習い、さらには木々で出来る限り覆い、内部は単純な平面で囲って刺激の少ない色や経年変化で一緒に年をとれる材料を使って、ちゃんとあなたを守っているけど存在感が無い家づくりを理想としています。

 

家は器でしかありません。

新しく家を造ったら数年は満たされるでしょうが、満たされ続けることを期待してはダメだと思うのです。

家族が本当に満たされるということは、その家のキッチンで作るおいしい料理だったり、子供たちの笑い声だったり、そして癒されるということは、何もしない時間がすごせることかなと思います。

 

そのとき、家は存在を消している。それが私たちの家づくりの理想です。

と色々書きましたが、まあ、こんなこと考えている建築屋もいるんだと知っていただければいいかなと思います。

 

2019年の分を2023年に読んでみて

あの頃から今と同じことを言っているので安心しました。

 

久々に自分で読んでみて、こんなことを書くんだったら「こんな家を勧めます」という書き方をすればいいんじゃないかと思いました。だからその分を加筆します。

 

家は器でしかないのです。

模様がたくさんある器、形が変わっている器は特定の決まった料理を入れるにはぴったりかもしれませんが、全てに当てはまるわけではありません。それに、相当良いデザインでない限り飽きてしまいます。

 

家は、毎日使う器です。ある特定のものを売ったり、特定の時間だけ過ごす店舗ではありません。

そうであれば、何色にも染まる丈夫で長持ち、そして基本形が美しい真っ白な器のほうがよくありませんか?

 

ということです。

 

存在を消す家を造るのは、存在を主張してくいる家をを造るよりはるかに難しい作業です。

けど、それにタマゴグミはチャレンジし続けたいと思っています。