親の土地に家を建てる際に必要となる分筆について解説します。
2024年04月03日
賢く分筆を活用して安心な家づくりをしよう。
親さんの土地に家を建てる計画依頼をたてつづけに頂きました。
その時 分筆についてアドバイスさせて頂いたことをまとめてみました。
分筆とは
分筆とは、大きな土地を、2つ以上の小さな土地に分割することです。まるで、大きなケーキをいくつかに切り分けるようなイメージだね!(GoogleAIのGeminiさんに聞いたらこんなふうに教えてくれました)
なぜ今回この話題を取り上げたのか その目的
相続・抵当権と土地の関係について知ってもらい、考える機会を持ってもらうため。
家を建てる時に大切な土地の条件の一部を知ってもらうため。
この2つをご理解いただくために書きました。
それでは始めましょう。
分筆には2種類あります
1つは登記簿上の分筆。
これは、不動産登記法に定められた分筆で、法務局で閲覧できる書類としてつくられます。
この目的は、「誰がどこに、どんな大きさの土地(不動産)を持っているか」を明確にする分筆です。
もう一つが建築確認申請のための分筆
これは、家を建てる時建築士が行う分筆です。
目的は、建築基準法等 家を建てる法律を満たすために行います。
この分筆は、何と建築士があなたや土地の持ち主と相談して勝手にやってもいい分筆です。
この2つの分筆には何ら関係性がありません。
それは、目的が違うからです。
下の図を見てください。
登記簿上の分筆で2つの土地にまたがって家を建てたとしても、建築基準法等、法規を守っていれば何ら問題ありません。これは何となく理解ができますよね。
それではもう一つ、次の図を見てください。
人の土地だろうが、確認申請用の分筆がされ建築基準法を満たされた土地であれば、家が建ってしまいます。
「いやいや、そんなことはないでしょ。」と思いますよね。
住宅の建築確認申請のとき、書類として測量図(土地の寸法を細かく計った図面)は提出しますが、登記簿や構図は提出義務がありません。ということは、チェックされない場合が多いのです。
とはいっても、住宅ローンを使う場合は土地については厳しくチェックされますし、建築士は建築士法で定められた「法令の遵守」と「倫理の遵守」がありますので、悪意やミスがない限り起こらない事例です。
登記簿上の分筆を行う理由
担保設定の関係で
親さんが住んでいる土地の一角に建てる場合・親さんがもっている大きな土地の場合で、住宅ローンを活用する場合は必ず検討してください。
現金で行う場合は、まあ、どちらでもいいです。
住宅ローンを借りる場合は、金融機関から土地と建物に抵当権を設定されます。
抵当権とは、もし住宅ローンが払えなくなった場合その土地や建物を差し押さえられる権利です。
抵当権の範囲ですが、一つの土地全てのものにかかります。(
例外として、抵当権設定の範囲は抵当権設定契約で定めた場合は別です)
つまり、ご自分が建てる家に限らず、親さんが住んでいる家、その土地全てです。
ということは、ローンが払えなくなったら自分の家だけでなく親さんの住まいもとられてしまうということです。
ご兄弟がいらっしゃる場合・土地の名義が親さんでなくお爺さんおばあさんの場合は登記簿上の分筆を検討してください。
これは相続の関係です。
相続の関係で
ご兄弟(ご親戚)がいらっしゃり、親さんの土地に家を建てる場合、まず検討するのは平等な相続ができるかどうかです。
この土地を私が使ったら、弟には同じ価値があるこの土地を与えればいい、とか現金を○○万円用意しておけばいい、とシミュレーションしておいてほしいのです。
もし、建てる土地の他に渡す土地等がなければその土地を平等に分けられるように分筆をしておきます。これはその土地に親さんが住んでいるいないに関わらずです。
理由として、住宅ローンを借りるとき抵当権設定をするのですが、その抵当権をはずして相続してもらうことは非常に難しいからです。(全額返済される場合は別です)
そんなこと言ってもね。うちの兄弟はムチャクチャ仲がいいの。弟はいつも「兄ちゃん、僕はいらないから」と言っているよ。と思われる方が多数でしょう。
けど・・・こんな小さな建築屋でも数年に1回相続争いの現場に立ち会います。
あなたにとって相続が発生するのはまだ数十年後。その時どうなっているかは誰にもわかりません。
因みに、遺言書で財産をお兄ちゃん100%あげます。と書いてあっても、残念ながら遺留分という制度があり、相続財産を請求されることがあります。(詳しく知りたい方は連絡ください)
登記簿上の分筆のデメリット
それは、費用と時間です。
測量士や家屋調査士・司法書士そして申請料などで40万円から70万円程度かかります。
また、敷地を確定させるために立ち合いがあったり、図面を確認したりと結構な時間がとられます。
建築確認申請のための分筆を行う理由
これは、親さんが住んでいる土地に家を建てる場合に適用します。
建築基準法では、1つの敷地に対して1つの建物しか建ててはだめです。けど、用途上分けられないときはべですけど。という法律があります。
建築基準法施行令第1条第3号
一の敷地内に二以上の建築物を建築しようとする場合においては、その建築物は、用途上不可分の関係にある場合を除いて、その敷地内に存する道路に接する部分に面して建築しなければならない。
上記の法律を住宅で成り立たせるには
一つの敷地で2棟家を建てる場合、片一方の家の トイレ・お風呂・キッチン いずれかを抜きます。それで「ほら、この家だけでは生活が成り立ってないでしょ。だってトイレがないんだもの。」というちょっと強引なことをします。
けど、そんな家嫌ですよね。お風呂が無かったら毎日母屋に「お風呂借ります」と行かなきゃいけないんですよ。
そこで、対策としてよく行われるのが、確認申請用の分筆です。
下の図は、その事例です。
太い赤の一点鎖線は建築確認申請上の分筆ラインです。
このようにすることで、各建物が別敷地となり普通に家が建てられるようになります。
建築確認申請上の分筆の注意点
分筆を行う場合 満たさなくてはいけないことが2つあります。
一つは接道。分けた土地それぞれが道路に2メートル以上、旗竿地ならそれ以上の場合もありますが、役所に登録されている道路に接している必要があります。
もう一つは、分けた土地に建つ家全てが、建ぺい率や容積率 高さ制限等法律を満たしていることです。
考えられるケースが、今回建てる土地は法規を満たしているけど、残った土地と建物が違法になってしまうというケースです。
因みにですが、この確認申請上の分筆は将来的に変えてもかまいません。ただし、上記2つの条件をクリアすることが必須です。
今回はちょっとややこしかったですよね。
詳しく知りたい方は気軽に連絡ください。
一級建築士で宅建士の井手がお答えします。
連絡は058-372-2575 若しくは info@tamagogumi.comまで。
この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士・宅建士 井手 徹です。