狭小住宅って案外いいかも! 狭小住宅の建て方 岐阜編
2026年01月29日
狭小住宅ってどんなことを注意して建てるの?
狭小住宅って、利便性の良い場所に住めて予算も抑えられる。魅力的なことはわかっている。けど、いい家が、居心地の良い家が建つのか不安。(そりゃそうだ!)
建てている家の1割以上が狭小住宅という、岐阜の狭小住宅専門家の一級建築士がその不安にお答えします。
不安と懐疑心はちゃんと持っていてください。
しょっぱなからなんていうこと言うの!と思いますよね。
けどよく考えてください。
お庭では子供たちと大きな犬がキャッキャとはしゃいでいる。
妻はピアノの練習中。思い切ってグランドピアノを買ってよかった。
私はソファーに腰掛け、大きな窓を開放し陽をさんさんと浴びながら、さっき挽いたばかりのコーヒーを味わう。 なんて幸せなんだろう。
なんていうことが、狭小住宅でできるわけありません。
だから、思いっきり不安になって、あきらめムードでスタート。
それでいいんです。

狭小住宅は引き算で豊かにする家
狭小住宅(コンパクトハウスも同じです)は切り取りの連続です。普通の家にあるものを削りとり、その効果で豊かな空間を実現する。
ものを両手に持っていて、私が その右手のもの 今すぐ捨ててください。と言ったら、ポイっと捨てる。そんな気構えが必要なのです。
一緒に見えないものに向かって、一生懸命考えながら進んで行くには不安は必要だと思います。
それと・・・不安なところに良い家が建つと「オッ、良いじゃん」と思いますよね。そう思っていただけると、、、、、、、私が助かるんです。。
さて具体的なお話をしていきましょう。

岐阜市内で建てさせて頂いた狭小住宅の2階リビングの様子です。
ボリューム(大きさ)を出す
最初に取り掛かるのはこれです。特に間口(家の幅)を出すのがポイントです。
家の幅を出す方法は案外簡単です。
土地の間口から隣地からの距離を引くだけです。
その隣地からの距離は将来必ずメンテナンスができる隙間を開ける。ことがタマゴグミのルールです。
ちなみに、タマゴグミでの間口のミニマムですが5.1mです。タマゴグミとして施工可能と判断している間口は4.8mまでです。 狭小住宅の土地の探し方
将来メンテナンスできるように
敷地一杯ぺったりとつけて建てることもできますが、どんないい家をつくろうと、遠い将来必ずメンテナンスは必要となります。メンテナンスを敷地内で完結できるだけの隙間はあけることが基本です。
ただし、店舗・貸事務所等収益物件は別です。この場合の目的は限定期間にどれだけの収益を上げるかが目的ですので、場合によってはメンテナンスのための離隔を取らないこともあります
民法上の家の離隔の話はここに書きましたので、こっちを読んでください。
隣地から50センチメートル離して家を建てる法律について【民法第234条】
間口が決まれば、車は1台か2台かをお伺いすれば、最大ボリュームがが出せます。
軒は必ず出す
これは賛否両論ですが、タマゴグミはこれがルールです。壁から20㎝出せる程度ですが、この軒のおかげで雨漏れリスクや建物寿命が大きく変わります。
木造住宅は庇付きの単純な屋根一択、箱型や軒ゼロはあり得ない、というのがタマゴグミルールです。
狭小住宅は普通の家よりメンテナンスがしにくい家です。よって、普通の家よりこういう点は注意する必要があります。
狭いから出さない。という考えでなく、狭いからこそ出すという考え方です。

両サイドがぺったり高い建物が建っていても、メンテナンススペースをきちっととります。
3階建てという選択
3階建ても建てられます。またタマゴグミとして実績もあります。
しかし、構造部材が増えたり、外壁、内壁とも燃えない構造にするために余分に費用が掛かったり、階段や窓の位置が制限されて間取りの自由度が減ったりします。
岐阜で土地から購入して家を建てるということを考えると、「こんなんだったら、もうちょっといい土地を買えばよかった。」という選択肢が出てきますので、基本2階建てまでが良いと考えています。(ただし、現在持っている土地の場合は別です)
間取りをお任せいただく理由
間取り(プランニング)は、お任せいただいています。
狭小住宅の場合、最も大切なのは構造です。許容応力度計算による耐震等級3を無理なく確立するには、特に構造区画というものを重視します。
構造区画がわかる図を下につけました。
間取りから決めるのではなく、どんな構造区画が取れるかのパターンを頭の中でいくつもシミュレーションしておくことが必要です。
構造区画をきちっと計画することで、安全かつ経済設計になるのはもちろんのこと、間取りの自由度も上がります。
構造区画についてもっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。 構造区画について
プラン先行の設計では、丈夫で経済的な狭小住宅はできないと私は考えています。
よって間取りは、いつもお任せいただいています。
コラム 私が構造区画という言葉を使うようになったのはつい最近。
かといって、今までも同じことをしてきました。
収納は多めに 住まい手の収納方法に合わせて
タマゴグミの見学会にいらっしゃる方からよく
「こにも、あそこにも収納がある。収納がいっぱい。」という感想を頂きます。
狭小住宅だからこそ、収納はできる限り多めにします。
また、お客様に収納が得意か苦手かを伺い、それによって収納スタイルを変えています。
まとまった収納は、階段下やロフト。場合によっては、広めの通路を作りそこを指定したり。
細かい収納は、キッチン周り、みんなが集まる部屋周りに、できれば収納するものをあらかじめ決めて作ります。
それでもものが収まりきらないということは、多々ありますし、タマゴグミで建ててものがはみ出しているご家庭も正直なところあります。
狭小住宅に住むことは、ものを捨てること、ものを増やさないこととの戦いです。

狭小住宅で設置したオリジナルキッチン・見せる収納スタイルです。正直なところ難易度高しです。
正面は自由度を持たせる
これは、防火地域・準防火地域特有の内容です。そしてタマゴグミの狭小住宅づくりで必須のルールです。
駅近くの土地や、幹線道路周り、建物が密集しているところは、防火地域もしくは準防火地域に指定されているところが多いです。
指定されていると、延焼の範囲(2階建ての例を言うと、1階なら敷地境界線もしくは道路の中心線から3m 2階は5mの範囲)は防火性能の高い材質で作らなくてはいけません。
よく知られているのはサッシですよね。ガラスに金網が入ったサッシ見たことありませんか? あれ防犯用ではありませんよ。熱でガラスが割れてもなお飛び散らず火が入るのを防ぐためのものです。
タマゴグミは外とのつながりを重視した設計をしています。その設計手法が空間を必ず豊かにすると知っているからです。
よって、みんなが集まる部屋の主たる開口部には自由度が必要なのです。
それが、延焼ラインに引っかかるから、ちっちゃな網入り窓にしようとか、仕上げは化粧サイディングで無機質な感じは嫌ですよね。
そこで、主要な窓や壁があるところは、延焼ラインから外すようにしています。
具体的な手法は
いたって単純です。うだつをご存じですか? 写真は美濃市の街並みですが、この丸の部分をうだつといいます。隣家からの延焼を防ぐために立てる壁です。
この発想を利用し、防火壁というものを作ります。
この壁を作るだけでも、数十万円かかります。35年ローンの観点から考えると、その壁のために月あたり数百円払っていることになります。
しかしその数百円で心地よさが買えるのですから、お客様にはご理解いただいています。

ちょっとわかりにくい写真ですが、準防火地域でもこんな外の空間が可能です。
常識を捨てる
そんな大げさなことではありませんが、狭小住宅の設計の時は、凝り固まった間取りの常識は捨てます。その一番簡単な方法をお伝えします。
「空間に名前を付けない」
廊下とか、玄関とか、子供部屋とか名前を付けた瞬間に、その空間はその用途のためものになってしまいます。
まあ、ここ人が通るところだけど物を置けるようにするか。とか、うーん玄関、お客さんは少ないだろうから(失礼なことを・・・)靴を置く場所だけあったらいいか。とか発想が浮くようになります。
後はこのブログでも何度も書いていますが、視線を通す手法や、視線を切る方法を多用して、限られた空間に広がりを感じさせます。

玄関を居間に取り込んでしまった例。
絶対譲れないことを伝える力
あなたに必要なことは、これだけです。
これだけは実現したい、これだけは絶対譲れない、これだけは嫌だ、というものを伝える力です。
「いやいや、簡単な話だよ。言うだけじゃん。」と思われるかもしれません、けど難しいのです。
最初にも言ったように、狭小住宅は切り取って豊かにする空間です。
切り取るためには、全ての要望を取り込むことは不可能です。
要望や嫌なことはすべてお伝えしていただいて構いません。むしろそうしていただきたいと思っています。ただし、そこから切り取り作業が始まります。
その時に「それ、ちょっと待った!」と強く言えるかどうかです。
そのためには、要望や嫌なことをできるだけ考えだし、それは「なんでそれがしたいのか」「なんで嫌なのか」を言語化することです。
そうすると、おのずと「ああ、これが自分の要望か」というのが見えてくるはずです。 たぶん。。
以上が狭小住宅の作り方です。
ちょっとは、狭小住宅でもいいじゃん、いやむしろいいかも。と思われた方はタマゴグミの井手まで連絡ください。
下の写真は奥様から「居間からはやっぱり木々が見たい」という要望に応えて2階の居間を計画したものです。狭小住宅でも不可能ではありません。

この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。







