金利上昇時代のローンの注意点と選択方法
2025年09月20日
住宅ローンについて、皆さんが本当に知っておくべきことを、私の本音を交えてお話しします。
なぜかというと、弊社で来年、再来年に家を計画されるお客様からの依頼がポチポチと入ってきています。私としては、その方々に面と向かっていう前に情報として出したいからです。
また、今回は本音で話します。持論てんこ盛りの内容となっていますので反論もあるかもしれません。
もし、反論や質問、ご意見があったらお教えください。できる限りお答えします。
そのご意見のほうが正しいと思ったら、素直に認めてその考えに訂正します。
今回は写真も一切使いません。安心して家を建てたいと思っている方向けの文書ですので、お飾りはなしです。
教科書のような内容は思面白くないじゃないですか。
ここ20年近く、ほとんどのお宅のローンに携わってきて、いまだ一人として破綻者を出していない(って、当たり前なんですが・・・)私の本音をよろしければどうぞ。
まずローンの大前提をお話しします。
- 住宅ローンの判断はご自身で行ってください。
銀行マンも住宅営業マンもだれも責任を持ってくれません。ましてや国が救ってくれるなんてありえません。
どの住宅ローンでもそれぞれ利点欠点があります。
これが最適なローンだなんていうものはありません。
これがいいんじゃないかなというローンをご自身で選ぶしかないのです。
住宅ローンは、慈善事業でなくれっきとした商売として行っています。
変動金利が0.3%なんていうことが続くわけないのです。金利0.3%で3000万円を35年借りると利子の合計は159万8000円程度。
単純ににこれを35年で割ると年45,430円程度。商売として成り立っていないのです。
だから金利上昇は当たり前の現象です。じゃあ、そんな時代に私たちはどうすればよいのでしょうか?
元利均等払いで変動金利を考えているあなたへ
※元利均等払いというと難しいので、毎月同じ金額を支払う方式でほとんどの人が使っている方法でと理解ください。
【変動金利】5年ルールと125%ルール(元利均等の場合のみ)
この中でも重要なのは5年ルールです。
変動金利ですので当然日々動く金利の見直しをされるわけです。
通常は半年に一度金利の見直しがあります。金利が見なされると当然返済金額も変わってきます。
しかし支払い金額は5年間は変えないというルールがあります。
ここ2年で変動金利は0.4%程度上がりました。
けど、支払金額は変わっていないので気づいていないという恐ろしい状態にあるのです。
下の票は、0.3%の金利が知らぬ間に0.8%になっていた場合の1年間でどんな影響があるかを示した表です。途中の数値は気にせず、色のついたところだけでも見てください。
借り入れ金額 | 金利 | 年数 | 月返済金額 | |
1000万円 | 0.300% | 35年 | ¥25,084 | |
元金 | 月利 | 利息 | 元金 | |
1月 | ¥10,000,000 | 0.0250% | ¥2,500 | ¥22,584 |
2月 | ¥9,977,416 | 0.0250% | ¥2,494 | ¥22,590 |
3月 | ¥9,954,826 | 0.0250% | ¥2,489 | ¥22,596 |
4月 | ¥9,932,230 | 0.0250% | ¥2,483 | ¥22,601 |
5月 | ¥9,909,629 | 0.0250% | ¥2,477 | ¥22,607 |
6月 | ¥9,887,022 | 0.0250% | ¥2,472 | ¥22,613 |
7月 | ¥9,864,409 | 0.0250% | ¥2,466 | ¥22,618 |
8月 | ¥9,841,791 | 0.0250% | ¥2,460 | ¥22,624 |
9月 | ¥9,819,167 | 0.0250% | ¥2,455 | ¥22,630 |
10月 | ¥9,796,537 | 0.0250% | ¥2,449 | ¥22,635 |
11月 | ¥9,773,902 | 0.0250% | ¥2,443 | ¥22,641 |
12月 | ¥9,751,261 | 0.0250% | ¥2,438 | ¥22,647 |
合計 | ¥29,627 | ¥271,385 | ||
金利が | 0.80% | になったら | ||
元金 | 月利 | 利息 | 元金 | |
1月 | ¥10,000,000 | 0.06667% | ¥6,667 | ¥18,418 |
2月 | ¥9,981,582 | 0.06667% | ¥6,654 | ¥18,430 |
3月 | ¥9,963,152 | 0.06667% | ¥6,642 | ¥18,442 |
4月 | ¥9,944,710 | 0.06667% | ¥6,630 | ¥18,455 |
5月 | ¥9,926,255 | 0.06667% | ¥6,618 | ¥18,467 |
6月 | ¥9,907,789 | 0.06667% | ¥6,605 | ¥18,479 |
7月 | ¥9,889,309 | 0.06667% | ¥6,593 | ¥18,491 |
8月 | ¥9,870,818 | 0.06667% | ¥6,581 | ¥18,504 |
9月 | ¥9,852,314 | 0.06667% | ¥6,568 | ¥18,516 |
10月 | ¥9,833,798 | 0.06667% | ¥6,556 | ¥18,529 |
11月 | ¥9,815,269 | 0.06667% | ¥6,544 | ¥18,541 |
12月 | ¥9,796,729 | 0.06667% | ¥6,531 | ¥18,553 |
合計 | ¥79,188 | ¥221,825 | ||
1000万円当たりの年間の差額が | ¥49,561 |
おわかりでしょうか?
支払いは変わっていないけど、金利が高くなった分金利の支払いが増え、元金が減らなくなるのです。
※元金とは、借り入れした金額のことです。この場合は1000万円です。
この現象は今現在現実に起こっていることです。
3000万円借りていたとしたら年間15万円程度、単純計算で5倍すると75万円。
この分の元金が繰り越し残ってしまっているのです。
ちなみに金利が1%上がったらどうなるかをやってみました。
3000万円の借り入れで年間298000円の元金が残ってしまいます。単純計算で5年で149万円! 実際はここまではいかないですが、まあ5年間で150万円ほど上がってしまうと考えてもよいでしょう。
125%ルールは簡単に説明します。
なぜ簡単にかというと、このルールが適用されるような世の中になってしまったら大混乱すると予想できるからです。
125%ルールとは、5年後にもし支払金額が今まで払っていた金額の1.25倍以上になっていたら、1.25倍で止めてあげますねというルールです。
金融機関の悪魔のような優しさを感じるゾッとするルールですね。
ちょっと計算してみました。
0.3%だった金利が5年以内に1.7% つまり1.4%程度上がったら125%ルールが適用されます。3000万円借りている場合、月々の支払いが2万円増える計算となります。
変動金利を選択する場合の対策
あとからお話ししますが、変動金利が悪いというわけではありません。
次のことができれば変動金利を使用しても問題ないかと思います。
1,来月から月当り2万円を絞り出すことができる家計を保つ。
月あたり2万円、年間24万円を絞り出すのは結構厳しいと思います。しかし5年後にそういう状態になる可能性は十分あります。
そうなったら、どこからそのお金を絞り出すのか、考えておいてください。
2,最低1年に一度金利を確認して本当の支払金額を知る。
5年間は支払い金額は変わりません。その間に金利が上がっていた場合5年後に対応できなくなります。例えば、お盆休み、例えば正月休みに1時間だけ金利を調べて先ほどの票を使って支払金額を確認してみましょう。
上に貼ってある表は私がエクセルで作りました。連絡いただければ無償でお送りします。
連絡先はこちらです。 ite@tamagogumi.com
この2点ができればOKです。
全期間固定金利を選択されるあなたへ
全期間固定金利は最善の策・・か?
私としては全期間固定派なのです。2%を超えてもお勧めしたいと思っています。
確か2015年頃でしょうか。全期間固定が1%を切った時がありました。
その時は全期間固定一択と強くお勧めしていました。
今は、強くはお勧めしていません。変動金利という選択もありと思っています。
理由は以下です。
2025年9月現在 フラット35の金利は1.8%程度です。
現在の変動金利は0.8%弱。3000万円を35年で借り入れた場合の月あたりの差額は14,409円 年間したら173000円弱 35年でにしたら3,273,700円の差です。
これだけ大きな差があるので、強くはお勧めできないのです。
もしかしたら変動金利が1.8%を超えることがあるかもしれません。
現に1980年代のバブル期は今より5%以上高い金利でした。
ただ、現在の経済状況の場合、そのようには金利は上げられないはずです。収入が1.5倍とか2倍になるような好景気になれば別ですが、可能性は低いですよね。
それでもなぜ全期間固定をお勧めするのか?
私を含め、人はどこかズボラなところがあるからです。
もし、近くに家を建てた方がいらっしゃったら聞いてみてください。
「あなたは、金利何パーセントで借りましたか?」
これを答えられる方は10%いないと思います。
私の場合たまにお客様に聞きますが、答えられる方はいませんでした。そして、私も正確には知りません。
ただ「今いくら払っていますか?」という問いには正確に答えられる方が多いです。
ローンの支払いは家庭にとって重要な数値だからです。
この重要な数値が数年に一度変化したら家計が狂ってしまう可能性があるのです。
それを防ぐのが全期間固定金利です。
全期間固定金利は変動金利より35年間の支払総額が少なくて済む。なんていうことはないと思ってください。良くて同じ、ちょっと多めに払うと思っておいて良いでしょう。
全期間固定金利は家計を狂わせないため、そしてちょっとだけ安心を買うローンの手段なのです。
ただ、10年弱前に固定金利を選んだ方々はラッキーでした。確実に支払は最安となるでしょう。
10年固定金利を選択しようと思っているあなたへ
3年・5年・10年固定金利【固定金利選択型】は
2025年現在の状況でお話をします。
全くお勧めしません。
3年固定金利なら変動金利を、5年、10年固定金利なら変動金利もしくはフラット35をお勧めします。
ただし、次の方にはお勧めできます。
固定期間が終わるときに大きな収入(退職金・相続など)を見込んでいる方。
固定期間内に全額返済を考えている方
です。
3年・5年・10年固定金利【固定金利選択型】をお勧めしない2つの理由
【第一の理由】
結構金利が高いです。
1.5%とか1.7%とか全期間固定金利に近いような数値です。3年固定金利でも1%ちょっとの金利。これでは話になりません。
【第二の理由】
金利の引き下げ幅が固定終了後に変わるためです。
これについては、ちょっと補足を読んでもらってから書きます。
【金利の補足説明】
ローン金利には店頭金利と適用金利があります
店頭金利という いわゆる定価があって、そこから大きな割引があって適用金利ができています。変動金利が0.7%といっても、それは「適用金利」が なのです。
式に書くと
店頭金利ー割引=適用金利 なのです。
変動金利を具体的に書くと、
現在の店頭金利2.875%ー割引2.175=0.7%といった感じです。
また、割引も人それぞれです。
その人の年収や頭金、資産、職業、資格によって変化します。公務員は有利で小規模企業は不利ということはあり得ます。
さて、10年固定金利(面倒ですので10年固定に絞ります)の場合は、その割引金利が2段階になっていることが多いです。
具体例を出しましょう。
2025年9月現在10年固定の店頭金利は4.7% そこから、割引で3%程度 結果1.7%の適用金利といった感じです。
そして10年後はさらに10年固定金利を選ぶか変動金利を選ぶか選択となります。
その時の割引金利は多分2%ありません。ということは、固定金利を続けようが、変動金利に切り替えようが必ず支払額は上がります。
銀行にこんな質問をしてください。
「10年後(固定金利が終わったあと)にその時の金利から何パーセント引いてくれますか?」
その割引金利が、変動金利の割引金利より大きかった場合は選択のするメリットはありますが、まあり得ません。
それでも固定金利選択型(10年固定)を使いたい方・今すでに使っている方は
固定期間が切れる時に、借り換えを必ず検討してください。
借り換えなんて難しいだろうと思われますか?
そんなことないです。今まで10年間しっかりとローンを返済してきた方は金融機関にとっては優良客であり、欲しいお客様なのです。結構いい条件を提示してもらえることがあります。
手数料や登記費用は掛かりますが、借り換えることを強くお勧めします。
私が、いまローンを借りるとしたら
2025年後半 いったいどんなローンがお勧めなの?
私の考えは
「フラット35の優遇をしっかり使って様子見をして5~10年後に借り換えるか決定する。」
です。
現在フラット35では ポイント制で金利引き下げをしています。
お子様の数 住宅の性能 維持管理 エリア によってポイントが与えられます。
うまく使えば、5年間1% 5年後以降も10年まで金利優遇されます。
ということは、5年間は変動金利プラスちょっと、5年以降ももしかしたら変動金利に近い金利で全期間固定金利が選択できます。
残念ながら10年以降(早い人は5年以降)は1.7%程度の金利になってしまいますが、10年後 もしくは5年後に様子を見て変動金利に借り換えてもいいわけです。
リスクとして フラット35の申請費用に5万円程度、つなぎ融資に20万円程度余分にかかる点です。
次におすすめは、ネット銀行の変動金利でしょうか。
まとめ
今回は本当に私の考え方です。反論もあるでしょう。プロの方が読んだら「ふざけんなよ!」と怒る人もいるでしょう。
けど、私はこれが私のお客様にはベストという思いで書きました。
私は年に1度、今まで立てたお客様のところ全棟にお土産をもってあいさつ回りをします。
その時、表札の名前が変わっていたり、空き家になっていたりしたらすごくショックを受けるでしょう。 そんなことがあったら本当に嫌なのです。
だから、安全な資金計画、ベストな住宅ローンの選択のお手伝いは私のためにやっています。
そうです。私はエゴの塊ですから。
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この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。