岐阜や愛知県は耐震改修がかなめ。改築・リノベーションしやすい家は?
2024年08月08日
うちの家はリノベーション・改築ができるの?その疑問に答えます。
このブログを読んで解かることは
- 改築・リノベーションは何を重視して行うかが解ります。
- 長持ちする家に改築する要が解ります。
- 改築・リノベーションが容易にできる家が具体的にわかります。
このブログでは、どんな家なら改装する価値があるのか? 改装か新築かその他の方法か、判断するきっかけは何か?を決めるヒントにしてもらうためのものです。
まずは、改築・リノベーションの基本についてお話ししましょう。
必須項目は耐震改修
耐震改修は絶対です。たとえ昭和56年以降の新耐震基準の家だとしてもです。
新耐震基準以降の家だから安全、なんていうことはありません。
「まあ、確かに法違反ではないけど・・・これってどうなの?」という建物があるのは事実です。
耐震改修がしやすいかどうかが、家の価値の鍵になると私は考えています。
長持する家にするのは当たり前
当たり前の話ですが、重要です。
長持ちさせる基本は木を腐らせないことです。
木は水と空気と温度で腐ります。
空気と温度は残念ながらコントロールは非常に難しいので、水を絶つことに力を入れます。水を絶てば腐らないのです。
水を絶つこととは、「雨漏れを起こさせない」「壁体内結露をおこさせない」ことです。
次に
断熱性能を向上させることです。
断熱性能向上と壁体内結露は表裏一体です。断熱材を突っ込んで数値上だけの向上をさせることは危険を伴います。結露させない断熱性能向上を心が蹴る必要があります。
そして、
間取りの自由度を高めることです。
これが結構難しいのです。特に、昭和後期から平成初期の物件はなぜか間取りがぐちゃぐちゃな物件が多いです。
必要でない柱を取り除き、新たに柱や梁を増設してという作業を行います。
優れたデザインの家にすることも重要です。
案外見落とされることが、「持つ喜びと誇り」です。
いい家だな、いい空間だなと心から思えるデザイン。これが結構重要です。
高い材料を使う必要はありません。窓の開け方ひとつ、高さの調整などで良い空間は出来るのです。
次の章からは、これらのことを実現するにはどんな既存の家がよいかを考えてみましょう。
~改築・リノベーション出来ない家があるの?~
ここまで読んで、改築やリノベーション出来ない家があるように思われるのですが、改築・リノベーション出来ない家はありません。どんな家でもできます。
ただ、莫大な費用、もしかしたら建てかえるよりも多くの費用をかけなくてはいけない物件がある。ということです。思い出深い家であれあば費用度外視でのリノベーションは可能です。
*注意事項*
ここからの章はタマゴグミのいての考えがふんだんに入っています。偏見があることをご容赦ください。しかし内容は実際に施工現場での事実からのものです。
新耐震基準の家 なんてど~だっていい!
「この家は昭和56年以降の新耐震基準で造られているから大丈夫。」
とは、言えません。
今後の地震には大丈夫、とかろうじていえるのは2000年 平成12年以降の物件です。
けど、2000年以降でも大丈夫とは言い切れません。4号特例という恐ろしい法律が存在しているため確実とは言えないのです。
4号特例とは
一定規模以下の木造住宅の場合、建築士が設計していれば建築確認申請時に構造計算の書類は出さなくていい。という法律です。ということは、構造計算がされてなくても、建築士が設計したというサインさえあれば通ってしまうのです。
一定規模とは 木造2階建て以下、高さ13m以下、軒高9m以下、延床面積500㎡以下 ほとんどの住宅が入ってしまいます。
本来建築士がきちっと構造設計をして監理していればよいのですが、そうでないケースもあるのが事実です。
この4号特例は2025年に改正されます。それでも200㎡以下の平屋はこの特例が残ります。
改築・リノベーションしにくい家
しにくい家という表現にしましたが、正確には改築・リノベーションに莫大な費用と制限がかかる家ということです。
【2階の主要な柱の下に1階の柱がない家】
上記の図のような家です。
このタイプの家は山ほどあります。中古の売買のご相談や改築のご相談を受ける時、そんな図面を見ると「ゾワゾワ」っとします。
最悪なのは、計算もされずに梁上耐力壁がある家です。何のことか解らないと思いますので図を書きました。
このような家をリノベーションするときの基本は、構造計算をして柱や耐力壁を支えいている梁の太さを検討します。(大体足りないです)
足りない場合はよっぽどのケースを除き、1階に柱を追加します。当然柱の下には基礎を追加します。
こんなことをしないといけないので、費用も掛かり、さらには間取りの自由度も減ります。
チョット参考に
計算したら30㎝の梁が必要なところに、今は24㎝の梁がついていた。だから6cmの梁を足しました。 これは正解??
はい、間違いです。梁は完全に一体化することはほぼ不可能です。
私なら最低21㎝の高さの梁を下につけて上部の梁と一体化します。(この太さは簡易計算で出ます)条件によりもっと太い材を選択する場合もあります。
【軒が出ていない家・屋根がガタガタしている家】
軒が出ていない家は論外です。
特に昔の家の場合はサッシ回りや壁から水の侵入が疑われますので場合によっては構造材の腐り等が予想されます。
屋根がガタガタとしている家は、屋根部分での水漏れの恐れがあります。
水漏れは、縦と横、横と横等ぶつかるところ、角度がつくところで発生しやすいです。そのような部分が多いと不利になります。
【ルーフバルコニーがある家】
これも結構多いです。
FRP防水やシート防水という方法でバルコニーを作っている家です。
この防水の耐用年数は10年程度で、大体ドレン(水を外に流すところ)もしくは角部分、手すり部分から漏れています。
水が漏れて素直に1階天井から雨漏れを起こしていればいいのですが、壁の中に漏れているケースが多く、その場合大体柱が腐ってなくなっています。
このような場合は、普通の屋根に改造してしまいます。
【基礎が無筋の家】
これは昭和55年以前に建てられた物件に多く見られます。
この場合は、
- 構造計算を行い家の力を出来る限り分散する方法
- 新しく基礎をつくりその上に土台と柱を新設して、力を無筋コンクリートにかけないようにする方法
- 一度家を持ち上げて基礎を打ち直す方法
- アラミド繊維などを使って既存の基礎を根本的に改良する方法
などがあります。
どれも特殊な方法で、費用が結構掛かります。
【断熱の状況・防水紙等の状況は】
まったく気にしません。どうだっていいです。
というのも2000年以前の物件の場合(2000年以降の場合も)改築・リノベーションの場合は一度骨組みだけにしてしまいます。
少なくとも内壁か外壁は全てはずします。そうでないと耐震改修ができないからです。
その時に問題があればサッシも断熱も防水関連部材もやり直します。というか、やり直す必要があると思います。
改築・リノベーションがやりやすい家は
築年数はあまり関係ありません。
とにかく真四角で総二階の家、屋根は単純にかかっており、軒が60㎝以上出ている家です。
出来れば基礎に鉄筋が入っていてほしいので、欲を言えば昭和55年以降の物件です。
しかし、それ以前のものでも、真四角総二階、柱が上下通っていて単純屋根、軒が出ている物件であれば問題ありません。
気になるお値段を公開
30坪程度の2階建て住宅を、間取りをゴロっと変えるという条件です。
仕様は
耐震等級2程度
外部にモイス等構造用面材・基礎は一部作り直して防湿コンクリート打設。
耐震等級3の上部構造にすることは可能ですが、基礎がついていかないと思います。
断熱等級5~6(HEAT20G1レベル~G2レベル)
壁天井ともセルロースファイバー吹込みを基本としますが、場合によっては吹き付け断熱材40倍発泡等を使用することもあります。
(但し吹き付け断熱材は将来解体するときにリサイクル不能で産業廃棄物となるという欠点があります。)
サッシや外壁
サッシは樹脂サッシ・複合ガラスを基準とします。(準防火地域を除く) 外壁はガルバリウム鋼板・一部木貼りです。
水回り
お風呂はユニットバス定価120万円程度です。
キッチンはタマゴグミオリジナルか、定価130万円程度です。
トイレは定価20万円程度です。
給湯設備はエコキュートもしくはエネジョーズです。
電気・照明
タマゴグミのいつもの仕様です
内 装
壁は水性塗装 床は無垢杉床はり荏油仕上。作り付け家具を要所に配置します。
このような仕様で
税込み1500万円程度となります。(2024年8月時点)
まともにやると結構かかるのです。
これに、外構・銀行諸経費や税金・引っ越し費用などをあわせると
総額1800万円程度となります。(2024年8月時点 50坪程度の敷地)
となります。
グレードアップや耐震改修の徹底をしていくと
最初の写真はタマゴグミ羽島モデル(40坪程度の家)です。
外壁が杉板張り、サッシは全て樹脂サッシに変更。深い庇を作り間取りも多派に変更しました。
耐震は基礎を作り直して梁や土台を追加、断熱は40倍のウレタン発泡、1階床に国産のタモの木、2階は杉床 壁は珪藻土、そしてお庭は自然の石を使って下草を這わせるというこだわりでつくりました。
この場合、元の土地建物代金別で
2500万円。24坪程度の新築が建つほどの価格です。
元の建物と土地代金をあわせると3000万円を超えます。
リノベーションでタマゴグミとしてできないこと
昭和56年以降の新耐震基準物件だから、内外装をちょっと触ってリノベーション終わり、という工事はあなたからのご依頼でもできません。
理由はいたってエゴな理由です。
今後必ず来るであろう大きな地震が起きたとき、「ああ~あの時何を言われても補強しておけばよかった・・・」という物件を1つとして造りたくないからです。
大地震の後、物流もインフラも止まった状態では、補修すらままなりません。大地震の後に住めなくなったからと、大きな補修の依頼が来ても困るのです。
それどころか、その家が原因で生命にかかわるようなことがあったら、私は心がズタズタになり二度と家づくりが出来なくなってしまいます。
いたって個人的な理由なのです。
事例を紹介
平成初期の物件をフルリノベーションした事例です。
昭和40年代の家をフルリノベーションした事例です。
この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。