木は雨にぬれても大丈夫? 【梅雨時の建て方】
2023年06月27日
先日梅雨の合間に建て方を行いました。
この時期の建前は、毎日変化する天気予報に一喜一憂しています。
建前のために、現場監督が行うことは、
1,大工さん・職人さんの段取り。
通常タマゴグミの建前は大工さんが8人~10人程度集まって行います。皆さんのスケジュール管理が大変なのです。
2,クレーン車の段取り
クレーンオペさんの腕前で、建前のスピードが変わってしまいます。いつもの方にお願いするのには2週間以上前から予約をしています。
3、当日搬入材料の段取り
構造材等は事前に入れておくのですが、断熱材や合板類の一部、屋根に使う野地板などは当日現地に入れることが多いです、
4.道路使用等の手続き
現場が狭く道路を使って作業する場合は、道路使用を警察に届け出てさらには地域に説明をしています。日程が変更になるとそれらの調整が必要になります。
その他、細かいことも多々あり日程がずれると結構大変なのです。
建て方・建前・上棟って意味が違うの?
建て方・上棟・建前 いろいろ名前がありますが、ちょっと意味が違うのでこれを覚えておくと知ったかぶり出来ていいですよ。
【建て方・建前】
土台の状態から柱や梁を組んでいく行為自体を言います。
【上棟】
棟木(屋根の頂点にある横向きの木)が上がることを言います。
例えば、建前が2日間かかったとしたら、1日目2日目の工事は「建前」といいますが、上棟は2日目の終了間近の時となります。
日本の建前は日本の環境にあっている
日本の木造住宅は柱と梁からなります。近年の建前なら40坪程度の家までなら1日で終わります。上棟すると、屋根までできてる状態ですので木をぬらさずに済みます。
2×4(ツーバイフォー)工法などの場合は、現地で壁を組み立てて建てていくので、上棟まで数日かかり、その間に雨が降ると内部が濡れてしまう場合があります。
ただし、ツーバイフォー工法も最近は工場組み立てがが多く、完成した壁や屋根を現地まで持ってきて組み立てますので一日で上棟まで行く現場が多くはなってきました。
そもそも建前の時、雨だとダメなの?
基本的に雨の日は建前はしません。
木を濡らすと腐ってしまうから、という訳ではありません。
一番は安全確保のためです。
木が濡れると大変滑りやすくなります、建前は高所での作業となりますので雨が降ると非常に危険になります。また、作業効率も極端に落ちてしまいます。
また、タマゴグミのように構造材自体が仕上げ材になる家は木に汚れが付くとあまりよくありません。
たまに建売等の現場で土砂降りの中でやっていることがあります。あれを見ると「大変だな」と気の毒になります。
木は濡れても大丈夫なの?
基本的に構造材は濡れても大丈夫です。ただし、ザーザーと数日濡れるのはちょっと考え者ですが。理由は、含水率20%程度に乾燥させた構造材は水にぬれても変しないからです。
柱や梁は木を乾燥させてから加工しています。
乾燥の度合いは「含水率」という数字で表します。
含水率とは
(測定する木の重さーその木が完全に乾いた重さ)÷その木が完全に乾いた重さ=含水率(%)
となります。
森に建っている木は、水をたくさん含んでいますので、含水率200%以上になることが普通です。下の図を見てください。
茶色い分は、木の細胞です。木はこのように細胞と細胞の間に空間があります。
空間の間にも木は水をため込みます。それを自由水と言います。
細胞の中にも水が入っています。これを結合水と言います。
木を乾燥させるとは
自由水を抜くだけではなく、結合水をも抜くことです。(全部は抜けませんが・・・)
木が反ったり、縮んだりするのに大きな影響を与えるのが結合水なのです。
ここでちょっと、数字を出します。
- 含水率30%を切ったら、完全に自由水が抜けた状態です。
- 含水率が15%を切ったら、材木は反ったり割れたりしなくなります。
- JAS規格で構造材(梁や柱)の含水率の基準は20%以下です
写真は建て方中に柱をとったものです。
ここに謎の数字が書いてありますね。
SD15とはSurfaced Dry 表面仕上げされた材料で含水率が15% という意味です。
ということは、この材料は含水率15%の材料ということです。
他の材料も見てみましたが、倉知製材の材料は15%が殆どです。
ということはもう変化しない・・・訳ではありません。含水率が完全に15%かというと多分違うと思います。それが証拠に、タマゴグミの家でも建ててから木の割れや隙間は発生します。
ついでですがE130という数字ですが、これやヤング係数を表しています、
簡単に言えば木材の強度(固さ)です。
この数値は重要で、構造計算を行うためには必ず必要なものです。
構造材は雨に大丈夫だからといって
雨にぬらしていいわけではありません。
上棟したら雨じまいが一過利するまではブルーシートで養生します。
理由はいくつかあるのですが
まずは合板類の保護。合板類を長時間濡らすと膨れてしまい床を貼る時でこぼこになってしまうからです。
乾燥した状態を保ちたいため。
工事はどんどん進んでゆきます。べたべたに濡れてしまうと隙間等に水が残る場合があります。その水が断熱材の性能を落としたり、結露の原因になったりします。
防蟻材の保護
タマゴグミが使用している防蟻材はホウ酸です。ホウ酸は雨に弱く雨にあたり続けると効果が弱まってしまいます。
綺麗に保ちたい
現場は上棟すると上履きでの入場を義務付けています。水にぬれると汚れやすくなり汚くなるからです。
そんな理由で上棟後はブルーシートで包んでいます。
今日の結論
充分に乾燥した構造材は水にぬれても大丈夫です。
但し、濡れないほうが良いに決まっています。だから、譲渡は素早く屋根まで完成させて、木材は保護することが必要となってきます。
この記事を書いたのは
株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。