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狭い土地に良い家を建てる時の考え方を、岐阜の建築士が語ります。

狭小の土地は面白い

建築士のさがなのですが、変形している土地・せまい土地・小さな土地・段差がある土地・日影が落ちる土地での設計依頼が来ると、なぜかうれしくなるのです。

景色が良くて広い土地・さらに予算はある場合何をやってもいいとなると、逆に迷ってしまいます。

 

狭小土地のようなむつかしい土地は、土地が家の間取りの正解をちゃんと持っています。

それを探し出して、見つけた時の嬉しさは何とも言えません。

 

今回のブログは、間口5.5m 奥行20m弱 33坪の土地に延べ坪24坪の家を設計したときに考えたことを書きます。

 

建てて半年後にお邪魔しました

奥様から、いつもカーテンは開けっ放し。狭いと感じたことはありません。それと寒くなってきたけど居間のエアコン1台で部屋中が十分温かいですよとおっしゃっていただけました。今どきの家並みの性能は出している結果だと思います。

 

当日ちょうど建設系の資格試験だったご主人(私も知っているむつかしい試験なののですが準備万端なのか余裕顔でした)が

「遊びに来た同僚やお友達に、すごくいいねとみんないうから、うれしくて。タマゴグミだよと宣伝しておきましたよ。」

とうれしいお言葉をもらいました。

 

その方の選んだ土地はこれです。

間口5メートルちょっとの土地

岐阜の街中で間口が5.5mの33坪の土地

 

困難な土地は設計者にとってはおいしい土地

私の設計の師匠、岐阜の宮崎先生から教わった言葉に「物と物がぶつかるときにディテールが生まれるんだよ。何もないところには何もないんだよ。」

 

土地でもそうです。

だだっ広い土地にポツンと家を建てるとき、私はすごく迷います。なんでもありありだからです。なんでもできるから何をやっていいのか解らない。

狭小住宅はやることを絞るしかない。それをかなえるためには捨てるしかない。

その内容をお客様と共有しやすいのです。

 

このご家族の生活にとって、一番大事なことは何なのかから考え、この土地で広々と暮らせることで居心地よく暮らしてもらう方法を探り、造った家です。

 

家の設計のスタートは言葉を自分なりに解釈する

家づくりには関係ないと思われがちですが、結構重要な内容です。

今回は

広々(広い)・玄関・居間 という言葉に注目しました。

お客様には今から書く内容を話していません。お客様には生活スタイルや家でやりたいことをお伺いしたのみです。

 

また。今から書く内容はその人によってちがいます。だから、これが正解とはとらえないでください。

今回はこう考えたんだ、私なら・・・という考えをしていただくとよいかとおもいます。

 

第一の言葉 広々(広い)

物理的な広々は、10帖が20帖になること。これは誰でもわかることですね。

 

今回『広々』という言葉について考えたとき、物理的な広さは不可能だと判断しました。そこで今回は、感じるものとして捉えることにしました。」

 

広々=広々と感じること

という定義です。

 

狭い土地に家を建てる場合、物理的に広くできないこと。この潔さが私は好きです。そこで広く感じさせるには、視覚を刺激して想像と感情を動かすことと考えました。

 

室内は無駄な仕切りを作らず、できる限り遠くまで視線を通すこと。

南に大きな窓を付け、雨の日でも開放できるようにする

そして、庭の先に壁を付けて視線を切りました

 

こうすることで、外部を内部に取り込み広く感じるようにしています。また、視線を切ることで近くを見せず遠くを見ることで何もない空間が続くような感覚を持ってもらっています。

 

 

部屋の中はできる限り仕切らないようにしました。

 

 

足元を隠すことで、借景が生きてきます。

 

また、ひさしは中間部分をつくり、特に雨の日など濡れていない床があることで広がりを感じるようにしています。

 

これらには大きな条件があります。昼間にカーテンをしなくてもよい構造にすることです。カーテンをしてしまったら、全てが台無しになります。

もう一つ、区切られた外部空間には知らない人たちが入ってこないこと。

これは格子戸を付けることで解決しました。

 

大きなひさしが付いた小さな庭とアプローチ。これがこの家の特徴を作っています。

 

デメリットは、日射取得に不利になること。

ひさしを作るのであればその分部屋を伸ばしたほうがいいんじゃない?と言われてしまうこと。

 

けど、軒下はこんな効果もあるのです。

 

 

吹き抜けはあったほうがいいの?

今回のお宅は吹き抜けを設けたのですが、吹き抜けはあったほうが広く感じる効果はあります。ただし、なくても広く感じるように作る方法はあります。絶対条件ではありません。

 

 

第二の言葉 玄関

 

今回のお客様にとっては玄関は何かということを考えました。

今回は勝手口が計画できないので、玄関はこの家の主たる入り口になるということです。

そしてお客様を迎え入れる場所。

 

ここでいう「お客様」という言葉も分析しました。

ご家族にとってお客様は頻繁ではないこと、家に上がるのは気の知れたかたで玄関先で済ます必要がないこととなりました。

 

宅配を受け取るところ

これは頻繁にあるかも。ということでした。

その他にもありますが、主たるものはこんなところです。

 

 

じゃあ、玄関はサイン程度に残しておけばいいのでは という結論に達し、お客様に仕切られた玄関があるプランと仕切られてない玄関のプランを提出しました。

 

玄関がきちっと仕切られた間取り。

 

 

玄関としての仕切りがない間取り。こちらを採用しました。

結果 広々と感じる仕切られていないほうを採用となりました。

ただし、仕切られていないとなると写真のような感じにはなります。

居間から玄関や玄関扉が丸見えです。

これを居間の一部と考えられる場合のみ、採用が可能となります。

 

なお、宅急便等の対応は格子戸のところで行うことで解決しています。

格子戸

格子戸でお客様対応をします。暑い時と寒い時は難あり

 

デメリット

宅急便等の対応の時、暑い寒いを感じること。

玄関を開けると冷暖房の効率が悪くなることや風が吹き込むことがあります。

 

 

第三の言葉 居間

 

今後居間の在り方は大きく変わっていくでしょう。

 

スマホやタブレットが普及し、テレビという集客装置が廃れて、夜8時に集まる必要がなくなりました。働き方も変わり、時間の概念がなくなました。食事の時間もばらばらになってきています。

家族が一緒にいても集まらないという状態が出てきています。

 

今回の場合、居間に人が集まる仕掛けを作っておこうと思いました。お子様がまだ小さいので2階に個室をあえて作らずワンルームとしています。

 

将来的には個室は必要となるでしょう。そのために仕切れるようにはしてありますがその時期を遅らせることで居間で過ごすという時間を多くして、それを常態化できないかと計画しました。

うまくいったかどうかは、10年以上後に結果が出ます。

 

まとめ

今回は狭小地に快適な家を建てるための考えかた ということで書きましたが、これは狭小地に限ったことではありません。

家を建てるとき、家の言葉を集めて一つ一つ考えてみるのは良いと思います。

 

例えば、

あなたにとってお子さんが勉強をするとはどんな様子なのか?

あなたにとって くつろいでいるということはどんな状態なのか?

あなたの家族にとって、夕食をとるということは、どんな様子なのか?

 

ことばを取り上げて、それを具体的に考えるだけでも家の作り方が見えてくるはずです。

ご相談 いつでも受け付けています

タマゴグミでは、家づくりを始めたばかりの方の相談にのっています。

遠慮なくお申し込みください。

 

この記事を書いたのは

株式会社タマゴグミ 一級建築士 井手 徹です。

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